51. シャッフルウォークにご注意
  スクエアダンスの足運びの基本は、すり足気味で歩くシャッフルウォークという歩き方です。昔カウボーイがダンスをしていた頃は靴に拍車がついており、外でのダンスでしたから砂地をすり足でシャッフルウォークすると、砂煙が舞い上がり、ダンスの動きに合わせて拍車が一斉にシャリシャリと音をたてていたそうです。それがなかなか決まっていたので、その名残でスクエアダンスのステップもシャッフルウォークとなったということです(そのあたりは会長にお聞き下さい。間違えていたらゴメン)。ところが医学的にみますと、このシャッフルウォークは少し危険な側面があります。

 一般に年を取ると前屈みになりがちで(骨がもろくなる骨粗鬆症の関係で背中が丸くなり前屈みになる)、足の運びも若い頃と違って十分に足を上げない(いわゆるすり足気味)になってしまうことが多いようです。何もなければいいのですが、家の中、外の歩道など、バリアフリーといわれているところでも、ちょっとした障害物や突起はどこにでもあります。若い人は観察力も中高年より優れていますから、そのような障害物につまずくことは余りありませんし、つまずいても反射神経のおかげで転倒することはまずありません。ところが中高年になりますと、視力(観察力といった方がよいでしょう)が低下し、障害物に気づかないで足を取られることが多くなります。
行進するみたいに足を高く上げればつまずかないかもしれませんが、普段はそのような歩き方をしませんし、あまり足を上げすぎると不安定になってかえって転びやすくなります。体重が軽いほど転んだときのダメージは少なくて済みますが(子供は転んでも擦り傷ができるくらい)、中高年が転ぶと骨折など重傷となる確率が高くなります。寝たきりになる原因として、一番多いのは高血圧などが原因の脳血管障害ですが、その次に多いのが転倒による大腿骨頸部骨折(太股の付け根のところが折れてしまう)です。若い人は骨折してもきちんと治療すればすぐに回復しますが、お年寄りの場合は骨折部の癒合が悪く、なかなか元に戻りません。悪いことに寝たきり生活が続くと、身体を支える筋肉が萎縮して骨が治っても立ち上がれなくなってしまい、そのまま寝たきりになってしまいます。

 スクエアダンスの場合でも、会場のちょっとしたゴミ(紙くずではなく、靴底からはがれたゴム片など)で足を取られることがありますので、ダンスに入る前にはそのような障害物がないかどうかをチェックした方がよいでしょう。普段の生活でも、よく足をぶつける傾向にある人は、足下に十分注意して下さい。あらゆる事故に共通ですが、大事故が起きる前には、ちょっとした前兆(ひやりとしたこと、ハッとしたことから、「ひやりハッと」といわれています)が必ずあります。最近足をぶつけやすい、道を歩いていてつまずいて転びそうになったなど、「ひやりハッと」にご用心。足下は十分によく見て歩きましょう。

52. 賢く歳をとるには -人生90年時代を迎えて-
 今年も日本の女性は、平均寿命が世界一でした(85.33歳)。男性は世界一ではありませんでしたが、それでも世界第3位(78.36歳)。立派なものだと思います。あと数年で90歳に届く可能性もありますが、この中には、寝たきりなど介護中のお年寄りも含まれています。そこで厚生労働省では「障害調節平均余命」といって、健康で元気に過ごせる寿命(健康寿命といっても良いでしょう)を発表しています。それによると、2000年のデータですが、日本人では74.5歳となっており、やはり世界一です。大まかに75歳が健康寿命だとすると、死ぬまであと10年。願わくばこの期間も健康で生き生きした生活を送りたいものです。そのためにはどうすればいいのでしょうか。
 規則正しい生活を送る、食べ物に気をつけるなんていうことは、まさに「言うは易し」で実行することはかなりの意志が必要です。おいしいものを食べ、スクエアダンスで身体とアタマを鍛え、多くの仲間とふれあう。これが健康の秘訣ですが、それ以外にも医学的にできることがあります。

 それは以前にも書きましたが、上手にお薬を使うことです。医療サイドからみると一般の人は薬に対する悪いイメージを持ち過ぎです。最近の医薬品はきちんとした学問的裏付けにより開発され、世界中の多くの患者さんに使って有効性を確認していますから、専門家の管理下に使えば身体に良いし安全です。訳のわからない「健康食品」や「サプリ」(けっこう高額なものが多い)に頼るより、かかりつけの医師によく相談してみましょう。

 欧米では、いわゆる生活習慣病については予防医学的な介入が必要とされています。少し血圧が高い、少し骨粗鬆症ぎみである、という段階から、積極的に治療して病気の進行を止めようとする考え方です。血圧が少し高いだけでは、重篤な病気にはなりませんが、慢性的に血圧が高いと脳卒中や心筋梗塞を起こす元となります。骨粗鬆症になって、背中が曲がってから薬を飲んでも元に戻りませんから、その傾向があれば積極的に治療していこうという考え方です。現在の日本の保険制度では難しい点もありますが、数年以内にこのようなトレンドになりそうです(予防的に治療した方が重症患者が減るので、トータルでは安上がりとなります)。これが定着すれば、背中が丸いお年寄りというイメージはなくなり、80歳を過ぎてもダンスはもちろんのこと、海外旅行やスポーツは当たり前という世の中になるかもしれませんよ。

53. 聞き間違いと勘違い
コールが聞こえにくいという人はそれなりにおられると思います。もちろん、聴力の低下という年齢的な変化も無視できませんが、多くは聞き間違いによるものです。コーラーさんの中にもゴモゴモしていて判りにくい人がいますが(もちろん千代田ではその様なコーラーさんはいません)、大抵はダンサーが集中力を欠いている場合に起こるようです。

人間の耳はよくできていて、聞きたいという音を増幅してくれ、逆に騒音はフィルターがかかりますので、ダンサーが集中している時はあまり聞き間違いは起こりません。むしろ油断している時(ベイシックなんて簡単さ)、他の人と雑談している時(レッスン中は静かにしましょう)などにミスは発生します。たたみ掛けるような早いコールをするコーラーさんの場合は、つい聞き逃してしまうと「今のはなに?」とまわりに聞きたくなりますが、その様な時でもグッと堪えて、ワンチップが終わるかゲットアウトしてからにしましょう。ダンス中に他のダンサーに質問すると、その声が他の人のコールの聞き取りに影響してしまいますから要注意です。

もうひとつ聴き取りにくい場合があります。それは日本人以外の人のコールです。ニュースなどで日本人が英語を話す場面をみることがありますが、日本人の話す英語は極めてよく聞き取れますね。もちろん発音のちゃんとしたアメリカ人の英語もわかりやすいと思いますが、他国人(中国人、インド人アラビア人など)の英語は、人によってはとてつもなく聴き取りにくいという経験をされた方も多いと思います。小生は年に数回、アメリカの学会に出かけますが、このときに閉口するのはアメリカ人以外の方からの質問です。ある程度判ればごまかしようもあるのですが、人によってはまるで何を言っているのか判らないこともあります。その様な時は立ち往生となりますが、親切なアメリカ人が英語から英語の通訳(?)をしてくれ、助けてくれます(ホッ!)。彼らは英語の達人(あたりまえ)ですから、多少発音が悪くても、文法がむちゃくちゃでも相手の言っていることが理解でき、正しい英語に直すことが容易にできるのだと思います。これは日本人に当てはめても同じことが言えます。多少あやしい日本語でも、相手が何を言いたいかはすぐに判りますね。

千代田でも時々外国人のお客様が来られ、コールされることもありますが、アメリカ人以外のコーラーさんの発音は判りにくいことが多いようです。これは逆もまた真で、おそらく日本人のコールは外国の人には判りにくいのでしょうね

54. 緊張持続時間
人間が目一杯緊張を維持できる時間はどれくらいだと思いますか? 以外と短く、10分から15分程度だといわれています。短いと思われる方も多いでしょうが、ここでいう緊張とは、目一杯集中している状態という意味です。学校の授業などは1時間くらいありますが、そのうちどれくらい先生のいうことを集中して聞いているのでしょう?試験問題など制限時間が1時間だとして、はたしてどれくらい問題に集中できるでしょうか?

人間はうまく自分をコントロールしていて、集中と分散、緊張と緩和を交互に行っています。集中力がずば抜けている人は、普通の人のようにあまり時間を掛けないでも問題を解決することが可能です。反対にダラダラ時間ばかりかける会議などではよい答えが得られないようです。試験問題などでも、ひとつの問題に集中した後はしばらくボーっとして、それから次の問題に取りかかるという動作を知らず知らずに行っています。小生は学生の講義も担当していますが、刺激に満ちあふれている現代社会を謳歌している若者を90分間(!)講義に集中させるのは至難の業です。一通りしゃべった後はスライドやビデオを見せたりしますが、よほど面白いものでなければ教室が暗くなった途端にみんな居眠りしてしまいます。

スクエアダンスのワンチップは15分くらいですが、これは大脳生理学的に極めてうまく工夫されていると思います。ワンチップ踊った後は一息入れて、さらにもうワンチップというように、緊張と緩和がうまく組み合わされています。講習などで詰め込まなくてはならない時も、あまり集中して躍り込みすぎるのは、脳が疲れてしまい効率という点では好ましくないかもしれません。この点をふまえてビギナーさんが適当に休憩がとれるよう、スターチップやラウンドが入っているのだと思っています(ラウンドの時に休憩ばかりしている言い訳ではありませんよ)。適宜休憩をはさんで、脳が疲れないように楽しく覚えていきましょう。

55. 靴とダンス
スクエアダンスは、コールに従ってフォーメーションの変化を楽しむダンスですので、ステップに関してはあまり細かいことは要求されません。ラウンドダンスはキューに従いますが、スクエアと異なり動きやステップの一致を楽しむダンスですから、細かい足の動き(それもキューに従った美しい動き)が要求されます。社交ダンスなどにも通じるところがありますが、このようなダンスでは足の動きを美しく見せるために靴(ダンスシューズ)にも工夫が凝らされています。これは小生の個人的観察で、間違えているかもしれませんが、足を、見た目、美しくするために、足先が細く、足の甲の部分も細く、かつ踵部分を高めにした設計となっているものが多いようです。医学的な見地からこれらの靴を検証した場合、はっきり言ってダンスシューズはどれも最悪といっていいでしょう。競技ダンスやデモンストレーションなど、やむを得ない場合を除いて、なるべくこのような「かっこいい」靴はお履きにならない方がよいと思います。よく通販などで見かける、「かっこわるい」靴が実は健康にはよいとされています。

足(とくに足底)は、なんとなくぺたんとした「かまぼこ」のように見えますが、驚くべき微細な構造で成り立っています。解剖学的には手のひらとよく似ていて、指の部分を形成する骨とそれを支える足根骨(手では手根骨、いずれも8個の小さい骨が組合わさっている)からできています。足底部はこれらの骨が組み合わされて、正面から見ても、横から見てもわずかに弓(アーチ)状にカーブしています。内側から足底部をみると、いわゆる「土ふまず」が窪んでいますが、この「土ふまず」を形成しているのが足の指の骨および足根骨です。「土ふまず」がはっきりしない、「扁平足」のお子さまが最近増えているという報告があります。運動不足で、勉強やゲームばかりしていることに起因する、一種の生活習慣病です。「土ふまず」のアーチがあるおかげで、素早く足を動かして身体を移動する際に、バランスを崩すことなく、スムースに、かつ足底部に痛みを感じることもなく動くことが可能となります。先程述べた「かっこいい」ダンスシューズは、この足の生理的なカーブの働きをすべて邪魔してしまいます。

足先が細く、甲の部分も細い靴の場合、足底の生理的なアーチが完全に固定されてしまう結果、クッションとして働くべき作用を邪魔することとなります。踵はある程度の高さはむしろあった方がよいのですが、ハイヒールのような靴では体重を支えた場合、足の前方部分に体重が掛かりすぎ、その結果足のおやゆび(拇)が外を向く、外反拇趾を起こす元となります。ダンスではハイキングくらいの距離を歩くことになりますが、ハイキングに出かける時にハイヒールを履く人はいないと思います。スクエアの場合はそれほど微細な足の動きは要求されませんが、3時間の例会で約8000歩、アニバなどでは軽く10000歩以上歩くこととなりますので、やはり足に優しい靴を履いた方がよいと思います。

医学的に理想的な靴は、エアクッションの入ったスニーカーでしょう。プロのバスケットボールの選手が愛用しているわけですから、急激な体重の移動、高く飛び上がった後の着地、激しいステップの変化などすべてに対応しています。アメリカ製の高級なものが結構な値段で売られていますが、これらの靴はサイズをきちんと選べば、足に優しく、いくら歩いても疲れない、医学的にもよい靴だと思います。ダンスに使う歳の難点は、滑りにくくできていることでしょうか。シャッフルウオークには向かないかもしれません。どなたかシューズメーカーの関係者がおられましたら、この点を改良した理想のダンスシューズを作って戴けませんか?

56. コーラーを解剖する(?)
スクエアダンスも慣れてくると、「フンフン、いつものね」なんて不遜な気持ちになりますが、そういう時に限って、ベテランコーラーはとんでもない(思いもつかない)コールを掛けてきますから油断できません(とくにNさん、Gさん)。いったいこの人たちの頭の中はどうなっているんでしょうか。それを解くヒントが先日作成され

たDVDベイシック編にありました。今までスクエアダンスのビデオは各種出ていましたが、どれも例会で椅子に座って見学している(横から見ている)ものばかりでした。今回千代田SDCで作成されたDVD講座は、斜め上から見た映像でできています(コーラーの西村さんから見た視線。ちなみに西村さんは映像には映っていません。声だけの出演)。これを見て、コーラーでもない小生が、コールを解剖してみました。

まず当たり前ですが、スクエアダンスの場合、動きの角度は常に直角です。ですから、たとえばグランドライトアンドレフトの場合、ダンサーは丸く動いて握手をして通り過ぎているように感じますが、実は四角の各辺を回っていることになります。スクエアセットをしてアレマンドレフトをすると、自動的にパートナーと向き合いますが、これはコーナーさんがセットにいる場合も、正面にいる場合も同じである。すなわち、コールを組み合わせて、最終的にゲットアウトしたい場合、そのポジションにコーナーさんを持ってくればよいということになります。文字に書くと当たり前のことばかり言うんじゃないよ、と言われそうですが、ともかくどんな動きになっても四角を忘れない、この心がけはダンサーにも通じると思います。コーラーはダンサーを攪乱するため、四角の感覚をなくすように、回転系のコールを掛けますが(アレマンザーなど)、その時も四角を忘れないで動くとコーラーのワナに掛からなくて済むと思います。

突然の思いがけないコールにうまく対処するための方法ですが、ウエーブの場合、一直線の壁を作らないでわざとジグザグ的な感覚を持っておくこと(ウエーブからのスクエアスルーなどに対処)、カラムでは8人隊形と4人隊形をいつも分けて考えておく(オールエイトサーキュレートとスプリッツサーキュレート、どちらが掛かるか判りません)、ひとつの動きが終わった後は、必ずパートナーや横の人と手を取ること(横一列に並んだツーフェースラインからのウィールアンドディール、ダブルなど。1回終わる毎に手を取らないと間違えてしまいます)などなど。他にもあるのですが、ここではあまりオープンにすると面白くないのであとは内緒です。

あまりうまく表現できなくてすみません。これは小生がコールの勉強をしたことがないのにコールを解説しようとしたからに他なりません。むむ、コールは奥深いですね。

57. コーラーと健康
 スクエアダンスは、アタマと身体を同時に反応させるということから、健康によいことは皆さんよくご存じだと思います。ではコーラーさんはどうでしょうか。確かにダンサーと比べると身体はほとんど動かしませんし、声を出しているだけのようですが、アタマの中は猛烈に回転していると考えられます。ではコーラーのXさんの一日を覗いてみましょう。

 明日は例会。ビギナーさんの講習があるぞ。今回は、どれどれ、リサイクルか。うーんどうやって教えたら効果的だろう?先週の復習もしなければ。みんなすぐに忘れるから、思い出しやすいようにコールを組み立てなければ。スターチップのコールも作らなくっちゃね。みんなビギナーの時は素直でいい子なのに、少し踊れるようになるとうるさいからなー。あっ先週と同じだとか、いつもワンパターンだとか、勝手なことばかり言うしね(とくにあいさんはうるさいからなー)。よしよし、ここでレフトハンドを使って引っかけを作ろう。etc, etc さあ当日。ビギナー講習では一生懸命やったけど、反応はいまいちかな。うーん、同じところを講習した先輩コーラーは、さすがにうまいね。勉強しなくっちゃ。スターチップではせっかく作ったコールメモを読み間違えて大汗。ぜったいに引っかかると思ったレフトハンドにもきちんと反応するし、あいさんは相変わらずうるさいし(?)、あいつがブツブツ言うから読み間違えたんじゃないか。でもまあまあ好評だったみたいだし、こんなもんでしょうね。でもこれじゃあコーラーミーティングでいろいろ言われそう。勉強になるけどね。

 こんなところでしょうか(コーラーXさん、ご免なさい)。でもダンサーとは別の次元でアタマを使い、冷や汗をかき、身体にいいことをしているようです。コーラーさんはいつも新しいコールを組み立てなければならない、しかも面白くわかりやすいものを作らないといけない(ダンサーから飽きられる?)、他のコーラーのよいところを取り入れて自分なりに工夫する、などといった日々の努力がアタマを鍛えているのでしょう。与えられた問題を解くよりは、新しい問題を作成する(創造性が問われます)ということは、才能も必要ですが大変な努力なしでは出来ないことだと思います。確かにずーっと踊っているダンサーに比べれば運動量は少なくなるかもしれませんが、自分がコールしない時はビギナーをリードして踊っておられますし、ラウンドでもお休みしないで参加されていますから、最近とくにラウンドをサボりがちのあいさんよりは運動しているかも。

58. ダンスと適温
 不順な天候が続く時は、室内で快適に運動できるダンスはありがたいですね。どこの会場もエアコンが効いていて、心地よい汗をかかせてくれます。ところで運動をする時の適温はどれくらいでしょうか。

 千代田の会場は、カスケードを除けば小学校の体育館や会議室などが中心です。カスケードは公共施設とはいえ、一般のホールですので、エアコンの設定温度はある程度こちらの希望通りになっているようです。実際、多くの会員さんが一生懸命ダンスしている割には、会場は快適な温度設定を保っています(踊っている方はまだまだ熱いと感じるかのしれませんが)。ところが小学校の体育館などでは、省エネの関係からか、設定温度がおおむね28度くらいですが、これは運動をするという観点からは好ましい温度設定ではありません。

 運動をすると汗をかきます。運動により筋肉が活動すると体温が上昇しますが、皮膚の汗が適度に乾燥することにより体温を下げて調節を行っています。汗が乾燥しないと、べとべとして気持ち悪いだけでなく、体温調節にも影響が出てきます。痩せようということで高温の中で運動をする方法もありますが、一部のプロ(ボクシングの選手など)を除いてお勧めできません。一般の人がこのようなことをすれば、たちまち熱中症になって意識を失ってしまう可能性があります。スクエアダンスを楽しんでいる中高年層は、エアコンの効いた(湿度が低い、すなわち汗が乾燥しやすい)快適な環境で運動しないと、とんでもないトラブルに見舞われる可能性があります。医学的にはスクエアダンスくらいの運動でも、設定温度は25度くらいにして欲しいと思います。

 でも公共施設ですからそうもいきませんので、その時は十分な水分補給、適度の休憩が必要となります。趣味のダンスですから、頑張りすぎず、疲れたなと感じたら遠慮しないで休憩をとりましょう。また休憩のし過ぎは汗が乾燥して体温が下がりますので、カスケードでは長期間休憩する時はロビーに出た方がよいでしょう(ホール内はダンサーに合わせていますので、休憩していると寒くなります)。まめに体温を調節して快適なダンスをお楽しみ下さい。

59. 考えることと動くこと
 例会では皆さん顔を上げていますか?それとも床をみていますか?一般的に人間はものを考えるときは下を向くことが多いようです。何か言われて、とっさに思い浮かべようとするときは上を向くこともあります(例えば今、小生は原稿をどの様に書こうかと天井を見上げていました)。試験などではどうでしょうか。いろいろな局面で何回か試験監督をしたことがありますが、アタマが活発に働いているときは下を向く(解答用紙がありますので必然的に下を向きます)、考えをまとめたり、何か思い出そうとするときは上を向く人が多いようです。

 例会の初心者講習では、新しいコールを教えてもらっているときは多くの人は下(足下)をみていますが、以前に講習を受けたベテランダンサーは上を向いてその内容を思い出し、確認しているようです(もっともそれは1〜2年生のダンサーで、超ベテランはビギナーの動きをみたりする余裕があります)。講習は勉強ですからその間は上を向いたり下を向いたりしても構いませんが、ある程度躍り込んだらパートナー(スクエアダンスの場合はいろいろな人がパートナーとなります。時には同性の場合も!)とのアイコンタクトを忘れないようにしたいものです。

 初心者だけでなくベテランでも、上のレベルを挑戦している時は、多くのダンサーはダンス中は下を向き、ワンチップ終わってそのチップの動きをおさらい(反省?)している時は上を向いていることが多いようです。人間はアタマをフル回転させて集中している場合、大抵下を向き、思いついた考えをまとめたり反復する場合は上を向く傾向があります。例会で休憩している時にダンサーを観察すると皆さんなかなか面白いクセがありますよ(自分もですが)。

 スクエアダンス(のみならずダンス全般)は、踊れればそれでよいというものではありません。人と人とのコミュニケーション(手を取り合ったりアイコンタクトをしたり)、姿勢や動き(見てくれも大切)すべてが活き活きとしたものでなければ自分たちも楽しくならないし、見ている人たちにもその面白さが伝わりません。その意味ではスクエアダンスの場合、姿勢を良くしてパートナーとコンタクトをとり(笑顔で向き合いましょう)、ハンズアップでキビキビとリズムに合わせて踊ることが大切だと思います。

 アドバンス以上のレベルではハンズダウン(誰が決めたのでしょう?)といわれていますが、そうするとどうしても目線は下を向きがちとなり、姿勢も前屈みで自分が次に動くポジション(マトリックス)を追いかけるようになります。動きが早く複雑だから仕方がないとお考えの方もいるでしょうが、こうなると「陣取りゲーム」で、そばで見ているとダンスとは言い難いものになっています。動きについても、上のレベルのダンサーの中には、リズムに合わせて動かないでコールされたポジションにおもむろに(自分はベテランでよく判っているんだぞと言わんばかりに)動く人がいますがこれも見苦しい動作だと思います(医学的にも運動になりません)。千代田ではアドバンスでもハンズアップで踊っていますが、この方が姿勢も良くなりますし、キビキビとした動きになりますから、見てくれだけでなく医学的にも好ましいと思います。

60. コーラーさんのアタマの中
 この前のアニバ、素晴らしかったですね。来日された3人にコーラーさんたちはまさにプロ中のプロで、そのコールのキレのよさ、声の素晴らしさに圧倒された3日間でした。会長も言っておられましたが、3人にコーラーさんたちはすべてサイトコール(紙などを見ないでダンサーの動きを見ながらその場で即興的にコールする)で、しかも結構複雑な、ダンサーを「あっ」といわせるコールを連発しておられました。そのなかでもびっくりしたことをひとつ。(カルガモからの引用です)アドバンスかプラスか忘れたのですが、コールの最中にPCトラブルか何かで突然音楽が止まってしまいました。

そのようなことは日本でもよくあることですが、その時のコーラーさん(トニーさんだったと思います)、全くあわてず、曲なしで難しいコールをどんどんかけ、一方でPCを操作し、別の曲を引っ張り出すことに成功。事なきを得ました。小生はたまたま休憩していたのでよく見えたのですが、その間、コーラーさんはダンサーも見ず、もちろんコールシートなども見ないでコールし続け、しかも片手ではPCを操作、配線のチェックなどをしておられました。その間、絶え間なく難しいコールを連発され、しかもしかもなんとゲットアウトさせてしまったのです!!!アメリカコーラーの凄腕はさんざん見てきましたが、これにはまさに腰を抜かさんばかりにびっくりしました。あの人たちのアタマの中はどうなっているんでしょう。おそらくアタマの中で8人のダンサーがコール通りに動いているんでしょうかね。何年か前のクリスマス会で会長がフクロをかぶって(つまり目隠し)プラスをコールされ、ゲットアウトさせたことを思い出しました。コーラーさんのアタマ、もっともっと知りたくなりました(引用終わり)。

 医学的には「飛び抜けた空間認知能力と記憶力」があるのだと思います。アタマの中に8人の小人がいて、コール通りに踊っているんだろうということは判るのですが、普通の人には難しいのではないでしょうか。コーラーさんはそれなりのトレーニングを積み、各コールの最初と終わりのポジションが判りますから、集中してやればある程度は可能だと思いますが、あの時トニーさんはパソコンや配線をチェックしていましたから、おそらく全神経はそちらに向いていたと思います(すなわちコールは片手間?)。

 「瞬間記憶術」という名前を聞いたことがあると思います。出演者は50個くらいのパネルを10秒間くらい見ただけで、あとは目隠しでどこに何があったかを当てるというものです。この場合、出演者はひとつひとつパネルを覚えているのではなく、映像をアタマの中に焼き付けているといわれています。ですから一般の人があとで写真を見ながら答えを言うかのように、目隠しで正解を出せるのです。有名なところでは(少し古いですが)将棋の枡田幸三名人がその能力を持っておられたようです(飛び立った鳥の数を瞬時に答えたという逸話が残っています)。

 今回のアニバでのびっくりは、これとは少し違っています(瞬間の映像ではなく、ダンスは常に動いている)。以前にピアニストのルービンシュタインが友人と楽しそうに語らいながら難しいショパンの曲をいとも簡単に(しかも情感を込めて)弾いているというシーンを見たことがありますが、むしろこれに近いのかもしれません。ということは、あの人たちにとっては、あの程度(!)のコールは別のことをしながらでも十分にできるということなのでしょうか。まさに普通のおしゃべりのように正確なコールが出てくるのでしょうか。大変な努力をされていると思いますが、あそこまで行くと天賦の才としか言いようがありませんね。



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