21、かけ合わせ
人間に限らず、有性生殖を行う(判りやすく言えばオスとメスのいる)生き物は、それぞれの性から遺伝情報を半分ずつ分け与えて子供を造ります。原始的な生き物ほど自分の身体を半分にするなどして(他の遺伝子が入らないようにして)子孫を増やしています。動物でも人間でも、いろいろな情報が混ぜ合わさった方が個性の多様化が起こり、進化する場合に有利な点が多いとされています。有名なダーウィンの進化論でも、たとえばキリンは首が長い方が高い木の葉っぱを食べるのに有利だから、首の長い種族だけが生き残った結果、現在のキリンが出来たというものです。実際の遺伝の仕方はもう少し複雑で、父親由来の遺伝子、母親由来の遺伝子はそれぞれが働きやすい位置で初めて効果を出すとされています。

哺乳類を含めて、多くの生物は父親と母親からそれぞれ1セットの遺伝子を受け継ぎ、合計2セットの遺伝子をもっています。多くの遺伝子は、父親由来と母親由来の両方がはたらいているのですが、父親由来の遺伝子、または母親由来の遺伝子しかはたらかない、といった特殊な遺伝子群が存在します。この現象を、”遺伝子に親の性別が刷り込まれている”ゲノミック・インプリンティング(genomic imprinting 遺伝的刷り込み)と呼び、こういった遺伝子をインプリンティング遺伝子(imprinted gene)と呼びます。このような現象は高等脊椎動物では哺乳類にしか発見されていません。

ゲノミック・インプリンティングの存在を示す話として、ラバとケッテイの話があります。 ウマとロバをかけ合わせると、どんな動物が生まれるでしょうか? ”ラバ(騾馬、英語ではmule)”という答えを思いつく人がいるかもしれません。 ラバは粗食に耐え、良く働く動物として昔から使われてきました。ロバよりも力が強く、ウマよりも丈夫なのです。 しかしこの答えは完全な正解とはいえません。

実はラバは、ロバの父親とウマの母親とのあいだに生まれた子供です。 この逆の組み合わせ、つまりウマの父親とロバの母親のあいだに生まれた子供は”ケッテイ (馬へんに決めるという漢字のつくり、馬へんに堤という漢字のつくりを書きます。英語ではhinny)”と呼ばれます。 この”ケッテイ”はラバと違い、大飯食らいで働かないとされ、ほとんど作られませんでした。 このように父親と母親が入れかわると子供の性質が変わるという現象は、 おなじ遺伝子でも、父親から受け継いだときと母親から受け継いだときに違いがあるということで、 ゲノミック・インプリンティングが関与していると考えられます。

人間の世界では、この現象はまだよく判っていません。ただ一部の病気では、遺伝子の組合せにより、両親には発病していないのにその子供には発病する病気があることが知られています。大抵は性染色体がらみですが(男の子にしか発病しない血友病など)、一部はこのゲノミック・インプリンティングによるものが発見されています。

日常社会でも、たとえば相撲取りの一家を考えた場合、お父さんが名関取でお母さんが普通の女性の場合、お父さんはそれほどでもないが、お母さんが名横綱の娘の場合を比較すれば、どちらがより強い関取を輩出するのでしょうか。

ダンスの世界ではどうでしょう。たいていは夫婦ともダンス好きであることが多いですから、その素質を受け継いで来るとは思いますが、うちの家族のように、絶対スクエアダンスはしない、と断言しているご子息も多いようですね。

22、方向音痴
方向音痴という言い方は日本語独特のセンスといえましょう。その方面であまりうまくできないときに、接尾語として「音痴」という言葉をくっつけると「〜がうまくできない」という意味で使われます(ダンス音痴、リズム音痴など)。ちなみに英語では音痴はtone-deaf、方向音痴はhave no sense of directionといいます。スクエアダンスでは、自分がどこを向いていて、次のコールがかかったときはどっちの方を向く、ということを常に考えておかないと(ベテランは無意識のうちにそれを処理してしまうようですが)、一瞬の判断ミスであらぬ方を向いてしまうこととなります。

英語の方向音痴は「方向に関するセンスがない」という意味ですので、まさにスクエアダンスで自分の方向を見失っている状態にぴったりです。ビギナー講習が始まりましたが、ダンス中に一瞬方向を見失うのはベテランダンサーでもよくあることです。とくにコールに集中しないで別のことを考えていると、とんでもない方へ自分はもちろん、ビギナーさんも引きつれて行ってしまうということが起こります。この方向を決めるという判断は、医学的にはどのように行われているのでしょうか。

上下左右を認識する(空間認識といいます)脳の領域は、前頭葉(おでこのあたり)にあります。ここはものを考えたりする、脳の中枢ともいうべきところです。身体の動きを伴っている場合は、前頭葉で考えるだけではダメで、身体を動かす命令(側頭葉、頭の横の部分)、バランスを保つ(耳の奥の三半規管という部分と小脳との共同作業)など、瞬時にいろいろな部分を使うことになります。以前にも述べましたが、脳のいろんな部分を同時に活動させるという作業は、脳を鍛える最良の方法です。とくに年齢を重ねるに従って、どうしても脳の活性化を怠りがちの高齢者にとっては、よいリハビリとなります。スクエアダンスでは、ダンスをしながらコールによって右、左に、しかも結構凝った動きをしなければなりませんので、当然そこに混乱が生じます。またこれがスクエアダンスの面白いところでもあります。

それでは方向音痴とそうでない人とはどこが違うのでしょうか。方向感覚のあまりない人は、散歩やドライブをしているときに、何気なく見たまわりの景色とか建物を鑑賞の対象としてしまい、「あそこの木には白い花が咲いていて、きれいだった」とか、「あの建物はなかなかシックでよい」とか、対象物をじっくり鑑賞する人が多いといわれています。方向感覚のある人は、きれいな花を見たとき、「きれいだ」と思うと同時に、そのまわりの建物、看板など、花だけでなく目に見えるすべての対象を無意識に脳の中にインプットしており、それにより自分の位置を確認しているようです。このような人は、道に迷って同じ場所に戻っても、「さっきはここを右に曲がった」というようにかなり正確に再現できます(トレースといいます)。

ではスクエアダンスで方向をきちんと定めるコツはあるのでしょうか。基本的なことですが、自分のホーム(ヘッド、サイドなど)をしっかり覚えておくこと、パートナーに見とれることなく(?)、今の自分の位置をしっかり自覚すること、コールをよく聞くことが大切です。さらに、これは中級レベルの人でないと難しいかもしれませんが、そのコールが終わったときの自分の位置を頭で再現して、そこの場所にいる自分と頭の中の位置とを重ね合わせることできるようにしておくことが大切だと思います。

23、外国語の理解と脳
 スクエアダンスをはじめた頃、多くのダンサーは英語でコールされるダンスを踊ることが出来るか、ご心配になったことと思います。確かにはじめた当時は、初めて聞く英語のコールで、しかもコーラーさんによって微妙に発音が異なっていますので戸惑われたでしょうが、しばらくすると(そのコールが理解できて、踊れるようになると)普段使っている日本語のように容易に理解できるようになってきたと思います。

千代田でも時々外国人のお客様がコールされます。最初はその発音の違いに戸惑いますが、しばらくすればすっかり慣れて、皆さんすいすいと踊られていますね。では言葉の理解はどのような仕組みで行われるのでしょうか。

 私たちの脳は、左右の半球から成り立っています。一般的に右利きの人は左脳が、左利きの人は右脳が中心となって働いています(脳の「優位側」といいます)。ただし左利きの人は社会生活上、どうしても右手を使わなければならないことが多いため(子供の時のしつけも影響します。お箸は右で使いなさい、字は右で書きなさいなど)、両方の脳を使っている場合が多いようです。ただし、言葉をしゃべったり理解したりする「言語中枢」は、その人の優位側にあることが判っています。

 言語中枢は2カ所に分かれています。ひとつは人の言っていることが理解できる中枢(感覚性言語中枢)で、もうひとつは自分の考えていることを言葉にして出す中枢(運動性言語中枢)です。私たちはこの二つの中枢がお互いに協調し会って言葉を理解しています。感覚性言語中枢が障害を受けると、相手の言っていることは何となく判るのですが、具体的にそれを頭の中で再生できなくなります。たとえば、「ネコ」と聞いて、「ネ」、「コ」という発音は判るのですが、「猫」という動物を頭の中に描けなくなります。逆に運動性言語中枢が障害されると、「猫」を見せられて、これは何ですかと聞かれると、それは「猫」だと言うことは判っているのですが、「ネコ」という言葉が出なくなってしまいます。

 スクエアダンスに話を戻すと、はじめてコールを聞いて説明を受けたとき、まず感覚性言語中枢が働き、その言葉を理解するようにします。スクエアダンスの場合は、コールを理解しただけではダメで、身体をそのコール通りに動かさなければなりません。そのためには以前述べましたように、運動を司る大脳の運動中枢と小脳との連携プレーが必要となりますが、動作を行う引き金はコールの理解にあることは間違いありません。もし病気などで感覚性言語中枢が障害されると、コーラーの言っていることは聞き取れてもコールの内容が判らなくなりますので、その通りに身体が動かせなくなります。

 習ったばかりの時はうまくいかなくても、反復練習することにより一連の動作がスムースになってきますが、これは運動中枢の慣れもありますが、コールの意味を理解するという言語中枢の役割も大きいと思われます。一方、運動性言語中枢はコーラーさんだけに必要なのでしょうか。この二つの言語中枢は、お互いに連携しあっていることが判っています。習ったコールを口に出して言ってみることは、そのコールを理解する上で大切なことです。自分がしゃべった言葉も自分の耳で聞こえますから、耳からもコールが入ってくることになり、スクエアダンス上達の良い方法だと思います。
ただしダンス中は他の人の迷惑になりますから、心の中で呟く程度にしておきましょう。

24、バイリンガル、マルチリンガル
 NHKの朝ドラにセイン・カミュという英語も日本語もペラペラの外国人が出ています。こういう人の頭はどうなっているのでし?か。日本人の場合、生直後からまわりから日本語が入ってきます。とりわけ大きいのは母親の影響です。お母さんが常に赤ちゃんに話しかけることは、言葉を理解していく上での大切な刺激となります。両親(もしくはどちらか一方、とくに母親)が外国人であった場合、子供が日本で育っていく過程でまわりから日本語の刺激を受けますので、多くの場合、自然に2カ国語を理解できるようになります(いわゆるバイリンガル)。セイン・カミュさんもそのような環境で育ったようです。ルピカさんは勉強を積み重ねた結果、日本語が上達された方ですが、ちょっとした言い回しなどの中に日本語的な表現ではない部分があったのを覚えておられると思います。バイリンガルの人は発育過程で両方の言葉が入っていますので、表現方法は子供っぽいことがあるかもしれませんが(その人が育った時期にもよります)、言い回しは上手です。

 言葉が身に付く期間は、10歳くらいまでといわれ、それ以後は難しいとされています。ここで言う言葉が身に付くとは、その国の言葉で考えると言うことで、外国語が上手だということとは少しニュアンスが異なります。たとえば中学生くらいで2〜3年外国に行くと、その国の言葉をしゃべり、理解できるようになりますが、頭の中でものを考えているときは日本語で考えていることになります。10歳くらいまで、多くの外国語に接すると、多くの国の言葉が理解できるようになります(マルチリンガル)。そのような人は、たとえば英語でおしゃべりしているときは英語でものを考えており、日本語でしゃべっているときは日本語で考えることとなります。同時通訳が出来そうですが、トレーニングしなければそのままでは出来ません。なぜなら、英語を聞いているときは英語で理解しているので、いきなり「それを日本語に訳して」といわれると英語の内容は判っているのですが、ストレートに日本語への切り替えが出来ませんので突っ掛かってしまうことが多いようです。

 スクエアダンスのコールは英語ですが、多くの方は英語として理解するというより、そのコールの動きをそのまま覚えていくという方法をとられていると思います。それは正しい方法で、まさにそれが外国語上達の秘訣ともいえます。日本人の英語能力は他のアジアの人たちに比べて劣っていることはよく知られています。その原因として、外国語をそのまま理解しようとはせず、必ず日本語に訳してから理解するという方法を学校で教えるからだといわれています。たとえば「アレマンドレフト」と聞いて、わざわざ頭の中で「これはお互いの左前腕部を取り合って180度回る動き」と置き換えておられる人はいないと思います。外国語も、いちいち日本語に訳さないで相手の言っていることがそのまま頭の中で具体的に描ける(たとえばI have a book.と聞いて、本を持っている相手の人の姿が目に浮かぶ)ようなトレーニングをすることが効果的だと言われていますが、逐語訳に馴染んだ我々世代では難しいかもしれませんね。

25、受信機能、発信機能
 年を取るとがんこになるといわれますが、これはどういうことでしょう。アタマが固くなり柔軟性に欠けるということも考えられますが、自分にあれこれうるさくいう人がいなくなる(自分が高齢?先輩はもういない、あるいは偉くなっているので、誰も何も言えない)ということもあるでしょう。頑固一徹というとなんとなくいい言葉のように聞こえますが、勝手気ままな人という一面もあるようです。多くのメンバーの皆様は、ある程度高齢となられてスクエアダンスを始められたと思います。すなわちもうあれこれ他人からうるさく言われない立場だったと思いますが、いきなりコーラーの命令を聞く、先輩からあれこれうるさく言われる(場合によっては引っ張り回される)という環境に放り込まれることになります。普通は逃げ出したくなるような状況だと思いますが(そんな人はサッサと止めてしまうのかもしれません)、ではどうしてそれをクリアーできたのでしょうか。ダンスのおもしろさということもありますが、メンバーになられた皆様の多くが柔軟なアタマをお持ちの方であったということが大きな要素だと思います。

 アタマが固い人はたいてい人の言うことを聞こうとしません。だいたい説明すら聞こうとしない、あるいは聞いていても真剣に聞いていない場合が多いと思います。大脳生理学では、自分の記憶と経験が詰まっている側頭葉(アタマの横の部分、こめかみの上あたり)中心で機能している(つまり過去の記憶、経験にしがみついている)ということになります。一方、アタマの柔軟な人は人のいうことをよく聴き、理解してその良い部分を取り入れようとします。創造性が育まれる前頭葉(おでこの部分)が活躍しなければこのような作業は不可能です。年を取ってから、前頭葉を使うことは一般的には容易ではありません。新しいことを覚え、それを応用する(いまから高等数学や量子力学を始めて試験を受けるということを考えればお判りになると思います)ことは高齢になると大変難しいことです。スクエアダンスの学習はそれほどではありませんが、やはり複雑な動きを覚え、しかもコーラーの指示によりそれを瞬時に行わなければなりません。これは脳の活性化という点では素晴らしいことだと思います。

人間は高齢になればなるほど受信機能(人のいうことを聞いて理解する)が麻痺してきて発信機能(自分の意見ばかり述べる)が発達すると皮肉った先輩がいましたが、まさにその通りですね。

26、人としてダンサーとして
 スクエアダンスを始めて、一番良かったことは何ですか、と聞かれたら何と答えますか? いろいろあると思いますが、個人的には何といってもスクエアダンスを介して素晴らしい多くの仲間と知り合えたことだと思います。自分の狭い世界だけに生きていたら決して出会うことがなかっただろうと思われる素晴らしい仲間と知り合い、友達の輪を拡げられたということは何とラッキーなことでしょう。スクエアダンスの良いところは、競技性がないこと、単純であるが奥の深いところ、その気になれば無限に学習を継続できることなどでしょうか。

競技性があると、どうしても競争意識が高まり、せっかくのレクリエーションがストレスの元となります。一般に競技性のないものはすぐに飽きてしまうものですが、スクエアダンスは無限といえる広がり(コールの数は軽く1000以上あるそうです)があるばかりでなく、単純なコールでも少しひねられれば(ワンス・アンド・ハーフとかクオーターなど)メインストリームでも多くのダンサーが動けなくなります。腕のいいコーラーはダンサーのレベルを見てコールのレベルを決めるそうで、先ほどのアニバのアメリカ人コーラーも前夜祭などでのダンサーの動きを見て当日のコールを組み立てたとのことです。

 せっかく始めたスクエアダンスですから何とか続けていきたいし、コーラーからいくら無理難題を吹きかけられても平気な顔でスイスイと踊りたいと思っていますが、気が付けば自分だけあらぬ方向を向いてしまうという低レベルのダンサーですが、今後ともよろしくお付き合いしていただければ幸いです。

27、賢く老いるには
不老不死は永遠のテーマですが、残念ながら現在の科学ではそれは不可能です。生き物は、その誕生と同時に細胞分裂を行い、それに必要なエネルギーを外から摂取し、老廃物を外に出すという作業を行いながら、自らを成長させていきます。言い換えればどんどん変化しているわけで、その結果として最終的に死を迎えるわけです。老化も成長の一過程と考えれば、若さがなくなったと嘆く必要はありません。もちろん若い頃に比べれば、体力も低下していますし物覚えも悪くなっていますから、ついつい「若い頃はもっとできたのに」といったグチをこぼしがちになります。何をしても同じように年を取るわけですから、どうせなら賢く齢(よわい)を重ねるに越したことはありません。それではどうすれば賢く年を取ることができるのでしょうか。

物わかりの良い年寄りを気取って、若者に媚びても仕方がありません。要はいつまでも若い心を持ち続けることだと思います。若い心とは、いくつになっても常に好奇心に溢れ、向学心に燃えることです。新しいことにチャレンジするフロンティアスピリッツを持ち続けることです。それにはスクエアダンスほど適したものはありません。スクエアダンスは多くの複雑なコールを覚えることから始まります。

記憶力の弱ってきている中高年には、覚えるだけでもなかなか大変ですが、それだけではなく、覚えたことをすぐに実行(身体を動かす、すなわちダンスをする)必要が生じます。習い事は何でも集団で行った方が高率がよいようです。ひとりですると、自分の都合だけで適当に止めてしまうことが多くなるからです。スクエアダンスは8人で踊りますから、ともかくある程度は自分で動けなければセットの仲間に迷惑がかかってしまいます。そのために講習や自宅に帰ってからの復習にも熱が入ることになるわけです。いつもの例会で約3時間スクエアダンスを踊れば、約8000歩以上も歩かせられることになります。しかもダラダラ歩くだけでなく、コーラーの指示に従って動かなければなりませんし、その間、必死にアタマを働かせることとなります。しかもスクエアダンスのコールは、上のレベルに行けば行くほど無限とおもわれるくらいありますし、ベイシックやメインストリームなどでも、ちょっとひねられれば(ワンスアンドハーフ、クオーターなど)、たちまち難しいものとなります。老化防止にこれほど適した運動は他にはないと思います。

28、転ばぬ先の・・・
医学の世界では、最近は予防医学が中心です。大きな病気になる前に健診を受けて、初期の段階で病気を発見して治療しようという考え方です。コスト的にも、大病になる人を減らせば、たとえ健診で多少お金がかかってもペイすることが判っています。

健診で発見する病気は、昔は結核、最近は癌ですが、それ以外にも血管ドック、脳ドック(脳・血管障害の発見)、骨ドック(骨粗鬆症の発見)などいろいろと多様化しています。お薬についても、最近は緩やかに作用して効果を持続させるといった設計のお薬が増えています。たとえば高血圧のお薬では、急激に血圧を下げる薬剤もありますが、最近の主流は徐々に下げていってそれを持続させるというタイプです。あらゆる分野でそのような薬剤の開発がなされておりますが、残念なことにまだ癌の予防薬や不老不死の妙薬はありません。

癌に関しては、早期発見を心掛けることぐらいしかできませんが、老化防止は工夫によりある程度は可能です。まずいつもアタマを使うことが大切です(ボケ防止)。身体は適度に動かさなければさび付いてしまいます。あとは一人っきりにならない、引きこもらないことも大切です。これはヒューマン・コリレーション(人間同士の交流とでもいいますか)が必要であるということで、やはり人間は多くの仲間と話し合い、時には意見の対立などもあって議論を交わす(かなりアタマを使うことになります)ことが一番大切だということでしょう。

もうお判りだと思いますが、スクエアダンスを学習し、それを実践し、さらに例会で(あるいはアフター9で)多くの仲間と話し合うという我が千代田SDCは、老化防止に最適の場であると考えます。その証拠に、クラブの会員の皆様の何とお若いこと!! これはお世辞ではなく、同年代の多くの人を仕事で拝見しております小生の実感です。


29. 男性ホルモン、女性ホルモン
生物には男女2つの性があります。それぞれの役割は生物によって異なりますが、雌雄の遺伝子の組合せによって次の世代が生み出されるということは、自然の生み出した最も素晴らしい仕組みだと思います。
どんなに優れた人でも、その人の遺伝子のみが伝わっていくとすると、何らかの自然界における天変地異が生じた場合、その人がそれにうち勝つことの出来る性質(遺伝形質といいます)がなければ、たちまちその段階で種の断絶が起こってしまいます。相手の遺伝子を取り入れることにより、自分にはないものを次の世代に伝えていけるわけで、それだけ遺伝的に選択肢が広がることになります(多様性といいます)。人間の場合、男性は男性らしく、女性は女性らしい外見となっていますが、この男性らしさ、女性らしさを表しているものが男性ホルモン、女性ホルモンです。男性ホルモンは筋肉や骨を強くし、攻撃的な感性を強化する作用を持っており、女性ホルモンは柔らかな筋肉、優しい気持ち、母性などを司っています。

ところで男女ともに両方とものホルモンが分泌されていることはあまり知られていないようです。男性にも微量ながら女性ホルモンが存在していますし、女性にも男性ホルモンは分泌されています。男っぽい女性、女っぽい男性がおられますが、そのような方は逆の性ホルモンが通常より多く分泌されているのかもしれません。ちなみに、性ホルモンが分泌され出す時期は男女とも思春期前後で、それ以前の乳幼児期には男女差はあまりありません。中高年期以後になりますと個人差はありますが性ホルモンは分泌されなくなってきます。老年期になると男女差はなくなって、赤ちゃんのように無邪気になることになっています(医学的にはですが??)。

スクエアダンスではサッシェポジションで男女の位置が変わることがあります。さらに位置の交換だけでなく、そのポジションでコールされた動作は男女に関係なく動かなければなりません。もちろんスタースルーやカリフォルニアトワールのように男女の役割がはっきりしているコールも多くありますが、アドバンスやチャレンジのレベルでは男女の別がさらになくなっていくようです。一般的にクラブの男女比の関係から女性が男性役をすることは多くありますが、男性が女性の役をすることは少ないようです。個人的には女性の位置で女性の役割で踊ってみたいと思いますが(もちろんダンスを極めるという純粋な考えですよ)、皆さんはどうですか。ダンスのことは詳しくありませんが、男女が入れ替わって踊ることがあるダンスはスクエアダンスだけではないでしょうか。

30. トワールとめまい
アメリカのスクエアダンスコンベンションに参加した時に気付いたのですが、Please do not twirl(トワールしないで)と書かれたカードを付けられたご婦人を拝見しました。多くはご年輩の方々でしたが、日本ではあまり見かけなかったものですから珍しく感じました。家内に聞いたところ、とくにシンギングの時に相手によってはかなりトワールでくるくる回されて、目が回ってしまうとのことでした。男性には判らないことですが、あまりに早く何回も回すトワールは控えた方が良さそうです。

医学的にはめまい(眩暈)は目が回ると表現される回転性の眩暈(vertigo)と、立ちくらみや高いところから下を見下ろしたときにくらくらする眩暈(dizziness, lightheadedness)に分類されています。トワールなどで発生するめまいは前者のvertigoですが、どちらのめまいも年齢とともに発生しやすくなります。相手の魅力にくらくらする(lightheadedness)のは結構ですが、その人にトワールされて目が回る(vertigo)のはご免被りたいとお考えのご婦人は多いかもしれません。
いつも相手が変わらない他のダンスでは、相手のことがよく判りますから、その人に会わせたダンスを踊ればよいのですが、スクエアダンスではシンギングで相手が次々と変わっていきますので、トワールさせることがお好きな男性は気を付けましょう。
ちなみに小生は今五十肩で腕が上がりませんので、やはりトワールは苦手です。

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