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SDのスタイリングとスカートワーク」について
スタイリングやスカートワークついて、私の知っている限り適切な文献はなさそうです。多くのフォークダンスと同様に、その国のベテランダンサーが踊っている踊り方がスタイリングやスカートワークだと思います。
スタイリングについて、アメリカンスクエアダンス誌のMSとPLUSの教本をめくると、少しだけスタイリングやスカートワークについて書かれていますので、この教本から、いくつかの写真をコピーさせていただきました。
しかしながら、この本もかなり歴史あるものなので、現在、アメリカでこの原則のような綺麗なスタイリングは失われつつあります。
先に来日されたコーラーラボの元会長のマイク・シーストラム(Mike Sheastrom)氏の夫人ゲイルさんのスカートワークとそのステップは素晴らしいものがありました。
必ずしも前述のアメリカンSD誌の物とは一致しませんが、そのままを真似してそれを基本にするのも一策かもしれません。
スタイリング
[ 1 ] Hand Position
Callerlabの元会長で、プロコーラーとして有名なMike Seastram氏が1992年に来日された折、Hand Positionついて尋ねたところ、Callerlab(インターナショナル・スクエアダンスコーラー協会)ではC1まではHands
Upでやってほしいと言われましたので、私もその約束を守ってその後10年以上、Hands Upを主張しています。
2003年春に三沢に来日された時に確認したところ、大変喜んでくれました。Hands Upで踊るとセットの中の他人の顔が見えて、ダンスの楽しさが伝わってきます。更に、周りでダンスを見ている人にも楽しそうに見えます。しかし、Hans
Upで気楽に踊っているとSDのセットが大きくなりすぎてタイミングが間に合わなくなるという欠点がありますので、セットを小さく保つことを心がける必要があります。
[ 2 ] Bow to Your Partner
左図をご覧下さい。Partner同志はしっかりと相手を見ています。女性の右手はスカートです。更にその姿勢です。我々日本人は、日本の習慣から、下をむいてしまうくせがあります。
Bow to your Partnerでは正しい姿勢が最も重要かもしれません。
[ 3 ] Shuffle Walk
SD特有のstepの踏み方がシャッフル・ウオークです。
かかとをほとんど使わずに,足のボール(親指の付け根の丸い部分)を床に滑らせるようにしながら、前に進むステップです。靴の裏がゴムのスニーカーではこのステップを踏むことは困難です。ボールにスリップ止めの無いダンスシューズで踊りたいものです。
1964年5月Sets In Order誌のオーナーであり、後にSDの父と呼ばれた故Bob Osgoodご夫妻がジェット機を一台チャーターして、80人のダンサーと共に日本を訪れました。
三鷹のグリーンパークで日米交歓パーティーがもたれ、そのときのグランドマーチでシャー、シャー、シャー、と滑るようなシャッフルステップの音に、日本人ダンサーは仰天しました。この驚きは今でも語り草になっています。千代田SDCでも踊りこんだ人たちがPLUSのダンスを踊るとき、シャッフルウオークの足音が聞こえるときがあります。とても嬉しくなります。
[ 4 ] Swing
Swingが上手な人に出会うとSDがとても楽しくなると言われる位にSDの中でダンス性の強い物です。
左図をご覧下さい。女性は男性の右肩、又は男性の目を見ているのが正しいポジションです。
男性は女性に合わせて、女性の右肩又は女性の目を見る。したがって、Swingで何回も回転しても目が回ることはありません。残念ながら、RDの影響で、Partnerを見ていない人が大勢います。これでは、SDのSwingにはなりません。回転で目が回ってしまいます。男性の右手は女性のウエストより少し高いところにあり、回転した時に2人の遠心力の発生を支える役割を果たしています。
体重の掛け方は、男性から見て女性の体重を感じ、支え合って周るのがSwingです。この体重を感じるのに最も良いレッスンの方法は、図(10)のように組んだ時、男性の左手と女性の右手を押し合いますとウエストに回した男性の右手と女性のウエストの上部の背中にお互いの力を感じることが出来ます。その状態で図(10)の右の方の絵の中にあるCenter of turnの黒丸を軸に回ります。体重がしっかりと掛けられるようになったら、男性の左手と女性の右手の押し合いは必要ありません。
足はWalk又はBuzz Stepで行います。パートナーと一体化しないで、一人で上下に「ピョコタン」跳ねるダンサーが時々見られますが、残念なことです。Swingの時に回転する方向に力を使えば跳ねることにはなりません。それは前述の支え合う体重がしっかりしていれば、直せると思います。SwingがスムースだとSquare Dance の楽しさは倍増するでしょう。
Swingとは2人で回るという意味があり、通常のSwingの他に、Hungarian Swing, Both Hands Swing, Arm
Swing, Elbow Swing, Louisiana Style Swing等があります。
[ 5 ] 目を見る ( Look her in the eye )
多くのフォークダンスと同様に、SDも自分のパートナーなり、オポジットなり、自分と一緒になって踊っている人の目を見るのが基本です。
目を見ることによって、リードがよりスムースになったり、ダンスの楽しさも増加します。しかし、必ずしも目を見た人と次のコールを行う訳ではないので、注意が必要です。通常は目を見た人とのコールがなされることが多いのですが、時として横にいる人と行うコールが掛かることもあるので、注意が必要です。
[ 例 ] Head Square Thru 4
Do sa do、Look her in the eye
California twirl with the girl beside you
[ 6 ] Turn Thru
Forearm (手を深く取った状態)でTurnを行ないます。
しかし、Waves から行う時、そのまま行う時もあります。それが正しいと書かれている日本語の教本もありますが、私は手をもちかえてForearm
Turnで行うのが良いと思います。
[ 7 ] Scoot Back
これもセットの中を向いている人はExtendしてForearm Turn を行ないます。
チャレンジレベルのダンサーで、Hand Gripで行う人もいますので、気をつける必要があります。手をとりそこねて、後ろにのけぞるRear backをすると危険です。Forearm Turnを徹底させたいと思います。
[ 8 ] Rear Back
取り合っている手を、引張るようにして、互いに後ろに体重をかけるということで、ダンスを一層楽しいものとします。
Rear Backのcallがなくても、次のようなケースは通常Rear Back して踊るのが通常です。
[ 例 ]
1. Heads lead to the right
Swing Thru , rear back
Right & Left grand
2. Heads Square Thru 4
Single Circle
Rear back to an ocean wave
Boys trade ,Boys Run
Wheel & Deal
Left allemande
スカートワーク
スカートワークの原則は女性の空いている手はスカートにということです。通常は片方の手を使っていますので、空いているもう一つの手でスカートワークを行います。
表紙の女性のスカートワークをご覧下さい。スカートの持ち上げ方は、少しスカートを巻き込んで前の方へ持ってきます。
(A)片方の手でスカートワーク
[ 1 ] Courtesy Turn
男女とも同じ方向を向き、自分のパートナーと左手で手をとり、(男性は手の平を上向きに)男性の 右手は女性のウエストに、女性は右手でスカートを持ち、しっかりとスカートを持ち上げ、2人の中心点を軸にして、男性は後退し、女性は前進してカップルで180度向きを変えます。
[ 2 ] Right & left Thru
向かい合ったカップルが向かいの人と手をとり、軽く引き合いながら、通りすぎ、(1)の要領でCourtesy Turn行います。
[ 3] Ladies Chain
女性は2組の中心で、右手を取って向かいに行き、[1]の要領でCoutesy Turnを行ないます。この際、向かいへ行く時は右手をスターで使っているので、左手でスカートワークを行う。この時男性は右側へ少しずれて女性を迎える心遣いが必要です。
向かいへ行く時にセットの中央へ右手でスカートワークしている人を時々見かけますがこれは間違いです。ティーカップチェーンの時も中央は右手のスターでスカートワークは外側の手で行ないます。
[ 4 ] 4 Ladies Chain / 4 Ladies Chain 3 / 4
女性はセットの中心に右手のスターをつくっているのでスカートワークは空いている方の左手で行ないます。セットの中央にスカートを集めるのは間違いです。
Coutesy Turn は[1]の要領でスカートワークは右手で行ないます。
[ 5 ] Grand Right & left
一人目であるパートナーと右手を取って互いに肩の高さで取り合い、互いに引き合うタイミングでスカートワークを左手で少し高めに持って始めます。
図 (6)を見て下さい。更にL & R と進むときに手を取っていない方の手でスカートワークを行う場合もありますが、カウントに遅れる危険性がありますので、余りこだわる必要は無いと思います。
[ 6 ] 4 Ladies Star by Right
セットの中心はスターなので、右手を上げて手を集め、外側の手でスカートワークを行ないます。
[ 7 ] Star Promenade, Allemande Thar
この時はセットの外側にいる女性のスカートワークが見せ場です。
表紙のスター・プロマネードはとても綺麗です。
[ 8 ] その他
Forward & Back, Grand Square 等は、空いている手はスカートを取る工夫をするのも良いと思います。
(B)両方の手でスカートを持つケース
[ 1 ] Ladies In Men Sashay
左図のように左右同じ状態でセットの中央へカウントに合わせて持ち上げます。
[ 2 ] Do-Sa-Do
a 右方ですれ違う時、右手のスカートは体の前に折りたたむようにして、右肩すれ違いの邪魔にならないようにして、左手でスカートワークを行います。
b 左肩で戻る時はその逆です。
[ 3 ] All around your corner See Saw your pretty little taw
[ 2 ] のDo-sa-do と同じ要領です。スカートを体の前で振り回わしません。
[ 4 ] Weave the Ring
Grand R & Lをイメージすれば、自ずとスカートワークをする手が解ると思います。
すれ違う側のスカートはすれ違う時に邪魔にならないようにして逆側のスカートワークをするのが原則のようです。しかしこれを勢いよく行うとメキシカンやフレンチカンカンのようになってしまいます。
両手でスカートの前をつかむように持って振る踊り方はフォークダンスの中にありますが、SDではありません。スカートワークの中で一番難しいのがWeave the Ring のやり方だと思います。とてもすてきな独特のスカートワークを行うダンサーがいます。是非上手な人のスカートワークのエレガントさを真似して自分の踊り方を確立して下さい。
[ 5 ] Grand Square
2人で前進 したり、2人で後退 するときは、空いている手でスカートワークをします。一人で後退したり、前進する時は図(1)のようなスカートワークが原則です。右足を前にステップしているときに、左のスカートが高くなっているのに着目して下さい。
[ 終わりに ]
スタイリングとスカートワークについて講習して欲しいと頼まれ、気楽にOKと言ってしまいました。後で考えたら大変なことだと後悔しましたが、後の祭りでした。そこで考えついたことが2点あります。
正しいスカートワークとはアメリカの踊り込んだダンサーが行っているものが、教科書通りでなくても、本物であろうと思います。我々がスカートワークに出会ったのは40年以上も前のことですが、米軍基地のパーティーでアメリカ人の奥様方が踊っていたスカートワークです。それが多少変化したとは言えアメリカのスクエアダンスのスカートワークの基本であると考えられます。
アメリカのスクエアダンサーがSDを習う時に手にしている教科書はどうなっているのかを考えて、そこでたどり着いたのが、Sets In Order
誌によってまとめられ、現在はAmerican Square Dance誌に引き継がれているBasic & Mainstream と Plus
のハンドブックです。両方の本で600個以上の写真やイラストがあり、スタイリングにも言及しています。千代田SDCの板谷敏史氏のご協力をえて、その中の10枚を引用させていただきました。興味の有る方は是非この2冊を購入されることをお奨めします。
Sets in Order Main Stream Hand Book
Sets in Order Plus Movements
価格が変更されていなければ、各2$と1.50$です。10$以上の発注が必要。
American Square Dance
34E.Main Street, Apopka, FL32703
Fax. 407-886-8464
2003年11月 初版
2004年11月 改訂
ダンスプログラムに対するガイドライン
2003年 4月15日コーラーラボ(インターナショナルS・Dコーラーズ協会)で、次の段階のプログラム(日本では次のレベルと言うことが多い)に進むに際して、次のような考え方が示されました。次のプログラムに進まれる前に、そのプログラムを充分踊りこんで、確実なものとされると同時に、充分楽しまれることを強調しています。日本でも大いに参考になると思いますので、ご紹介します。
コーラーラボのダンスプログラムの踊りこみ推奨時間
コーラーズラボのダンスプログラム委員会ではコーラーラボのすべてのダンスプログラムについて、質の高いダンスを推奨したいと思います。この目標を成し遂げる際の最大の障害は、ダンサーが余りにも早く、それぞれのダンスプログラムを通過してしまうことにあります。コーラーラボの各々のダンスプログラム委員会はダンサーに対し、可能な限り、それぞれのプログラムに留まり、ダンスを楽しまれることをお奨めします。次のステップのプログラムヘ進むことは現在のプログラムが上手になる方法ではありません。又、次のプログラムが存在するという理由で、単純に次のプログラムに進むことを示したり、期待しているものではありません。
次の段階のダンスプログラムを習おうとされるすべてのダンサーの方々に
1 |
現在のプログラム及びそれ以前のプログラムに於いて、コールされる題材について、完全な知識を有し、完全に理解できること。 |
2 |
コールに基ずいて、それを踊る肉体的反応能力を有すること。 |
3 |
現在のプログラムについて、複数のCallerのコールで踊ること。(生でも録音でも) |
4 |
現在のプログラム及びそれ以前のプログラムに於いて、定義に基ずいて踊る能力を有すること。 |
5 |
現在のプログラム及びそれ以前のプログラムに於いて、自動的に体が反応して踊れる位に、充分踊りこんでいること。(踊りこみ時間は個人個人によって異なります) |
6 |
現在のプログラムのダンスフロアーで他のダンサーを手助けする能力を有すること。 |
7 |
次の段階のプログラムで見られるような、より複雑なアイディアに対して探究心があること。 |
8 |
新しい段階のプログラムを習うのに、時間が充分とれると約束できること。 |
アドバンスやチヤレンジのプログラムを習おうとする方は、前記の8項目に加えて、次の2つが必要条件となります
1 |
いろいろな体型を認知する能力と、1つの体型の中での自分の位置を認知する能力を有すること。 |
2 |
色々なコンセプトについて、理解する能力を有すると同時に、未知の状況でもこの コンセプトを適用させることが出来ること。 |
米国でスクエアダンスの人口が激減しており、色々と再興策がとられていますが、その効果はあがっていません。このような状況のもとでCallerがダンサーに注文をつける形で、前述のガイドラインが出されたわけです。
MSからPLUSへ、PLUSからADVANCEへ、ADVANCEからC1へ、C1からC2へ、とダンサーがあまりにも早く次のプログラムへ進んでしまう事によって、スクエアダンスから、ダンス性が失われ、ダンスの楽しさが失われていくことに対する危機感から、作られたガイドラインです。
特に重要なことは、例えばPLUSを踊るということはMSの上達の手段ではないという点です。すべてのプログラムでそのプログラムが充分踊れるようになって、更に充分な時間がとれるときに次のプログラムへ進むことを進めています。
日本でも一部で、あまりにも早く次のプログラムへ進んでしまうという傾向があります。
2年がかりで一気にADVANCEからC2へと進んでしまう人も見受けられます。そのいずれのプログラムでもスムーズではなく、楽しくダンスを踊れているかどうか疑問が残ります。更に、問題となるのは、ダンスのスタイリングがしっかりせず、自分でしっかり角度を取らない「フローター」となったり、音楽に乗って踊れず、かかと足で遅れてウォーキングしたり、一つのCALLの後にしっかりと手を取り合わなかったりするという人たちが現われています。そして自分の所属するMSのクラブへの出席もおぼつかないという状況です。 指導者にも問題がありますが、ダンサー自身がどのようにスクエアダンスを楽しんでいくか、自分でしっかりと判断する必要があると思います。
ADVANCEが踊れると格好良いとか、誰かさんがC1を踊るから、私もC1をやらなくてはといった考え方は誤った考え方です。更に自分はADVANCEを習ったので、MSやPLUSは完全だと間違った考え方をしてしまいます。SDのすべての基本はMSで、MSが定義に基ずいてスムーズに踊れる状態になればPLUSへ進んでも簡単にマスター出来ます。各プログラムは前の段階のプログラムに習熟してから、次のプログラムに進むべき性格のものだということを、ダンサー自身が改めて自覚する必要があるのではないでしょうか。これを機会に自分で考えてみてはいかがでしょうか。
「SDのダンス・タイミング」について
SDは音楽(リズム)に乗って踊れてこそダンスです。
タイミングよく踊るにはダンサーはコールの定義をしっかりと覚えて体に入れて、コールに合わせたタイミングよい反応で、リズムに乗ってステップを踏み自分のポジションに到達することが必要になります。一方では、コーラーのコールが重要になります。私見ですが、SDのタイミングの80%以上はコーラーに依存しています。
千代田SDCのアニバのゲストコーラーのLarry Letson氏のコールで踊られた方は感じられたと思いますが、彼のパターコールのリズムとスピードは130前後の早いビートでしたが、要所ではコールをゆるめてフォーメーションが整うのを待って、矢継ぎ早にキチッとしたタイミングでコールしていました。プロのコールとは言え、踊っていてリズム感があり、タイミングがとりやすく、心地良いものがありました。SDですから、コレオグラフィー(振り付け)の意外性も充分ありましたが、良いボディーフローに基づいた流れるようなコールで日本人ダンサーを魅了してくれました。
素晴らしいタイミングのコールとは何かを一言で表現することは出来ませんが、ダンサーとして踊ってみればすぐわかります。タイミングの悪いコーラーで踊ると頭と体、足がアンバランスになってしまいます。急にコールを止められて、頭が前に出てしまった経験をされた方も多いことと思います。最近目立つのはコーラーにリズム感が乏しく、コールを棒読みしているようなシーンです。これではSDが面白くなるはずがありません。コーラーはスクエアセットの中の一員として、自分が踊っているタイミングでコールしています。従って、自分自身がダンスをしっかりと踊っているコーラーのコールのタイミングは素晴らしいものとなります。逆にサイトコールに気をとられて、リズムや発声がおろそかになっているコーラーが余りに多いのには残念な気がします。
アレマンドレフトでコーナーに戻すことも大切なことですが、コールがバラバラとかけられリズムを失っては単なるゲームを解いているようなもので、ダンスとは言い難いと思います。米国のプロコーラーは、大勢の人の前でコールする時はほとんどサイトコールを行わないと言っていました。事前に覚えているモジュール(複数のコールを組み合わせて作った一連のコール)でコールしているそうです。最高のエキサイトメントはサイトコールでは出来ない、とまで言っていました。コールのベストタイミングはサイトコールから生まれにくいのです。しかしながら、ダンサーを良く見てコールのタイミングをしっかりとっていると思われます。
ここまで、コーラーのタイミングを主に述べてきましたが、ダンサー側のダンスタイミングについて考えてみたいと思います。私はSDは男性のリードで踊るものではなく、8人のチームワークで踊るものだと思います。コールが聞き取れなかったり、動きが間違ったり、不安な人に、セットの中の他の人が、目や手や指先でヒントを与えて、チームワークを成立させます。そして自分はリズムを外すことなく正しいタイミングで、自分のポジションに入る。セットの中の他の人にポジションを判り易くするのが、本当のリードだと思います。私も慌てて、他人を引張ったり、押してしまうこともありますが、これはリードではなく、セットを壊したくないためにやってしまうことで、決して褒められることではありません。よくあの人は「リードが強すぎる」とクレームを付けられる人がいますが、その人はチームワークを忘れて、自分一人で踊ろうとしている人だと思います。手を強く握る人は他人の軽いリードを感じることが出来ません。又サッサと自分のポジションに入ってしまう人もいます。この人もチームワークを全く理解していません。また、総てを他人依存で自分で動こうとしないダンサーにはがっかりします。何年経っても、他人のリードを待ってばかりいるのは、SDを理解していない人というより言いようがありません。最悪なのは良くベテランダンサーに見られることですが、セットの中で、コーラーの如く指示を出しすぎて、自分の正しいポジションに入るタイミングを大幅に遅らせてまで頑張る人です。セットの中で正しいポジションに正しいタイミングで自分が入ってあげれば、それをヒントに、他のダンサーはその人のポジションを感じ取ることが出来ます。一人よがりで、全体のタイミングを外して、早すぎたり、遅れすぎたりしないことが大切だと思います。
コーラーもダンサーもそのレベルのダンスプログラムを習熟し、反応レベルを高める必要があります。コーラーは踊れないという評がありますが、これではリーダーとしての資格はありません。コーラーはダンサーの鏡とも言われる位ですから、しっかりとしたタイミングで踊り込んで、タイミングの良いコールが出来るように心がけようではありませんか。一方、ダンサーはセットの中で他人の世話になる頻度を減らして、自立して踊れるようになりたいものです。そして、出来る事なら、セットの中で困っている人にポジションのヒントを与え、チームワークを保てるようになっていただきたいと思います。セットの中の8人がタイミングを合わせて踊れた時、最高の喜びがあります。
「SDのダンスタイミング」とはコールの掛かった瞬間の、コーラーとダンサーの心地良いタイミングのやりとりだと思います。
Square Dance Term集
SDのコールは大きくSinging CallとPatter Callの二つに分かれます。Singingは曲のメロディーや歌詞にあわせて、歌の中にSDのコールを入れて構成されます。一方、Patterは英国からの移民によって踊り継がれてきたKentucky Running Setというダンスにそのルーツがあります。Hoedownというカントリーの音楽にのって韻を踏んだおしゃべりの部分が特徴です。現在のSDでは、そのおしゃべりの部分は少なくなりましたが、随所に使われており、それが分かると Patterコールで踊る楽しさは倍加します。ダンスの意味に直接関係あるものと、ダンスとは直接関係のないおしゃべりとがあります。これらを総称してSD TermとかFillerと言っています。本号から連載で、Term以外の英語も含めて、取り上げてみたいと思います。
[ Look her in the eye ]
「目を見る」と言うことです。相手の目を見るとダンスが楽しくなります。
[ 例 ]
① Heads Square Thru 4
Do-sa-do your Corner
Look her in the eye, Slide Thru
Square Thru 3/4
Left Allemande ~
② Grand Right & left
Meet your Partner
Do-sa-do,
Look her in the eye & Step right up
Swing & Whirl
Promenade go round the World
[ Rear Back ]
「後ろへのけぞる」という意味で、互いに体重を後ろに掛け合います。これができるとダンス性が増します。
[ 例 ]
① Heads lead to the right
Swing Thru
Rear back
R & L Grand ~
② Heads Square Thru 4
Single Circle
Rear Back to an Ocean Wave
Boys Trade
Boys Run
Wheel & Deal
Left Allemande ~
[ Pretty little Taw ]
Tawはインディアンの言葉で、女性のことを言うそうです。辞書には書いてありませんので、確かではありません。Girl, Honey, Kate,
Suzie, Seniorita, Woman, prettiest one, 等々Patnerの女性を指す言葉は沢山あります。一方、男性は、Man、Gentleman、Boy、Senior、Cowboy、John 等々ありますが一番面白い例をあげます。
[ 例 ]
All the hairly legs
Promenade in-side
Get back Home Swing
足に毛がもじゃもじゃしている人はPromenade In-side という意味で4 Boysという意味になります。もし、このコールで女性がセットの中をPromenadeすると大きな笑いが起こります。
アドバンスのコールになりますが、Beau(s)とBell(s)というのがあります。各々男性、女性を意味していますが、この場合はSDの特定のコールの言葉になっています。Beau(s) は男性の位置にいる人、すなわち、2人の間で左側にいる人、Bell(s) は女性の位置にいる人、すなわち、2人の間で右側にいる人という意味で、男女の意味としては使われませんので、注意が必要です。
[ Squeeze In ]
「割り込んで手をとる」という意味です。非常に多く使われます。
[ 例 ]
Heads Pass Thru,
Separate Around One
Squeeze In, make a line,
Into the middle & back
Star thruZoom
C1のコールにSqueeze というのがありますが、これとは全く別のものです。時々C1を踊るダンサ-が変な顔をしていますが、この人は“Squeeze
In”を知らないと思われます。
[ Those Who Can ]
「出来る人」という意味で、その体型の中で、誰かがそのコールを踊ることが出来ますので、早く見つけてコールに従います。If you can も同じ意味です。また、Those
というのは、非常に重要な言葉で良く使われます。
Those are Facing directly, Those in the Wave,
Those in the middle,
Those in the Box, Those in the mini-wave,
又Those in the wave以外の例で、Those を省略して、単にIn the waveと言うように使われますので、注意する必要があります。
[ Congratulations ]
「おめでとう」という意味で、ダンサーが一連のコールを上手く踊れて、コーナ-又はパートナーに到達( Get Out )した時にコーラーがダンサーを褒める言葉として、Allemande
LeftやGrand R&Lの直前に使います。
If you lucky, If you did good, Celebrate, Perfect,
Keno Boys you are all thru などがあります。
[ Across the set ]
自分の方から「向こう側」にと言う意味で、よく使われます。
(例) Head Ladies Chain across (from you)
4 Ladies Chain across
Wave the girl across the set (hall)
Gents star left across the hall
これと関連して、4人のラインから方向を示す言葉に、Diagonally (斜めに)、Down the Line (横方向に)があ りますので、同時に覚えてください。
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① Across ( the set )
② Diagonally
③ Down the Line (Along the Line) |
類似語にCross と言う言葉があります。 「~and Cross」 とか「Cross & Turn」といったCallがADやCにありますが、この場合のCross
は4人の内向きの人が横断して相手の位置へ行くという意味になります。
[ Face ~ ]
「向きなさい」という意味で、通常は他動詞で向く方向や、向く相手が指示されます。
Face your corner cornerの方を向く
Face your partner partnerの方を向く
Face right ( left ) 自分の位置のままで、指示された右の(左の)方向へ90度向きを変えます。
Face In ( out ) 自分の位置のままで、セットの中心(外側)へ90度向きを変えます。
Face to the middle 自分の位置のままで、90度向きを中側の方へ変える。時として単に中心を向くとう意 味で使われることもあります。
Sides Face、 ~ この場合は自動詞で、Sides の人が向き合ってから、~のCallに従います
[ Promenade don't stop don't slow down ]
Promenade をしながら、自分のhomeが来ても止まらないで、そのままPromenadeを行い続けると言う意 味です。
(例) Promenade don't stop ,don't slow down Keep on moving around the town
[ Tandem ]
二人のダンサーが前後に縦に並んだフォーメーション。
前の人をLeader、後方の人をTrailerと言います。
「Tandem Concept」と言うのがC1にありますが、これは二人が一人のダンサーになったつもりで踊り ます。
(例) 「Parallel Ocean Waves のフォーメーション」から In Tandem, Swing Thru
[ Leader (s) ] Tandem のフォーメーションの前にいる人をさします。
[ Trailer (s) ] Tandem のフォ-メーションの後ろにいる人をさします。
以下色々な例を示します。 |
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がLeader |
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がTrailerを意味します。 |
[ Skip ]
子供の頃、飛び跳ねてスキップしたことがあると思います。ステップでスキップというのは、左左、右右という具合に片方を2回づつ使います。つまり、左の次は右でなく、一つを抜いて、左左となるステップのことです。
SDでは「一人を抜かす」とか、コールの中の「一つを抜く」と言った意味で良く使われます。ADやCを踊る人にはSkipという言葉は重要なTermの一つです。
[例]
① Allemand Thar の例
Join hands circle left
Face Your Partner, Do-pa-so
Partner Left・・・
Corner Right・・・
Partner Left make an Allemande Thar
Men back up not too far・・・
Shoot the Star, forward two
Go right & Left form a Star
Men back up not too far・・・
Shoot the star Skip one Girl( or Pass on Girl)
Promenade the next Girl~
② AllemandeTharの例
Allemande Left,Allemande thar, forward two,
Go Right and Left Allemande Thar
Boys Swing In Allemande Thar
Back along boys not too far ・・・
Slip the Clutch
Skip one Girl ( or pass one Girl )
Allemande Left with your Left hand
Partner Right, Right & Left Grand
③ Load the Boat での例
Skip the first Part of Load the Boat
すなわち、Load the Boat が4つの部分から成り立っているので、最初の一つを取り除いて、残りの3/4を踊ります。
Ends の人は2人通り過ぎたら、その場でセットの中を向く、その間にCentersの人は、90度外側へ向きを変え、パートナーとトレイドし、パススルーする。
[ All in to the middle, and Texas Shout ]
Circle上で全員で手をつなぎ、センターへ4歩前進、4歩後退するときに、大きな声を出す。
[ 例 ]
All in to the middle, with a Cowboy Yell
All in to the middle with a Whoop & Holler
日本では良く、All in to the middle, Hey , Hey, Hey とコールされますが、私は米国でコールされているのを聞いたことがありませんので、正しいかどうか判りません。
[ Reach in ]
手を中へ伸ばすと言う意味です
[ 例 ]
Center Girls Square thru 3/4
Boys reach in ( with your left hand )
Courtesy Turn Your Girl
後へ手を伸ばすことをReach back といいます。
[ Stir the Bucket ]
バケツを回すという意味で、何を意味しているか分からない言葉です。パターコールが終わった後、1組が2組、2組が3組と一組ずらしてSinging
Callをしますが、この一つずらすことを「Stir the Bucket」といいます。右へ回すことも、左へ回すこともあります。バケツに水を入れて回すと、中の水はそのままで、バケツだけが回ることがわかります。こんなことから、SDの中心はそのままで、外側の組をずらす意味に使われていますが、その歴史は分かりません。
別の言い方で、「Rotate the Square」という言い方もしますが、これは英語そのもので親切かもしれません。今年の3月にCallerlabのコンベンションへ参加する途中、シアトルでコールをするチャンスがありました。その時Stir the Bucket で終わるコールをかけましたが全くうけませんでした。後で分かったのですが、ワシントン州ではバケツを回してSDを複雑にする必要がないということで、この習慣がないとのことで驚きました。
次の例に示すコールは私が考えついたBucketで1964年に米国のSD雑誌「 Sets In Order 」誌のChoreography(振り付け集)
に投稿し、掲載されたもので、現ででも世界中のコーラーが使っています。
例 [ Quick Bucket ]
4 Ladies Chain Across
Finish it off with a half Shahy
Heads Up & Back out there here
Sides Face Grand Square
1, 2, 3, Turn
1, 2 ,3, Stop
Bow to your Partner ,Corner too
You’ve Stirred the Bucket for Another Call
[ Inside Out, Outside In ]
Star promenade の時使われます。2人のStar Promenadeの時使われます。2人のStar Promenadeのポジションはそのままで、内側の人が後退し、外側の人が前進して、その場で回転します。
通常、Once & Half で逆向きにStar promenade をします。Insideの人が男性のときMen back out, from a ring Circle Left というような場合はこの変形です。Star Promenade のことをTexas Star と言う別の呼び方もありますが、上から見ると駅馬車の車輪に例えることもできますので、別の言い方で、
Hub back Out, Rim Flies In, Once & Half
Star Promenade gonna again
と言うようなTermでコールされることもあります
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