73.ワクチンのお話し
そろそろインフルエンザが流行する季節ですが、皆様予防注射はもう済ませられましたか?最近はワクチンの技術が進み、ほとんどの病気が予防可能となりました。とくに抵抗力の弱い、お子様とお年寄りは、きちんとワクチンを受けるようにしましょう。世界最初のワクチンは、有名なジェンナーの種痘です。その当時、流行していた天然痘を予防するため、ウシの天然痘(牛痘)にかかったウシの膿を人間に接種し、その有効性を実証しました。現在では天然痘は世界中で撲滅されたことが確認されており、赤ちゃんへの種痘接種は中止されています。

 天然痘のウィルスは形を変えませんので、撲滅することができましたが、他の多くのウィルスは薬や身体の抵抗力に対して変異するので、なかなか撲滅できないのが実情です。とくに風邪のウィルスは、多くの種類が関係しており、未だに特効薬はありません。いわゆる風邪薬は、症状をとるだけ(咳を押さえる、鼻水を少なくする、熱を下げるなど)で、根本的な治療法ではありません。インフルエンザは流行が毎年変わりますので、毎年注射を受ける必要があります。抵抗力の弱いお子様、お年寄りは、年に2回の接種がお勧めです。

 新生児、高齢者では、肺炎球菌による肺炎が重症化して、命に関わることもありますので、肺炎球菌ワクチンが実用化されています。新生児は4回くらいの注射が必要ですが、高齢者は1回だけでかなり有効であるとされていますので、ご心配な方はかかりつけの医師にご相談下さい。

 最近、産婦人科では子宮頚癌の予防ワクチンが話題になっています。つい最近わが国でもやっと認可され、中高生(女子)に対して公費による接種が始まっています。子宮頚癌は、HPVというウィルスが子宮の入り口に感染することにより発病することが分かり、そのウィルスに対する抗体を体の中に作ってしまうことによりHPVの感染を予防するというものです。HPV感染は性交渉により伝播するため、経験のないうちに注射した方が医療経済的にも理にかなっているということで、若年者に対する公費負担が実現しました。今のところはその有効性は70%くらいといわれていますが、現在アメリカで治験を行っている新型のワクチンは99%くらいの有効性があるということですので、あと30年くらいすると先進国では子宮頚癌は撲滅される可能性があります。

 それ以外にも、アルツハイマーの予防ワクチンなどが現在開発中です。いずれも現段階では治療ワクチンではなく、予防効果しかないようですので、認可されましたらボケない内に接種してもらいましょう。予防医学が進むと、ますます老人が死ににくくなりますので、あと10年くらいすれば(戦争など起こらなければ)、人間の寿命は軽く100歳を越える可能性がありますね。

 ワクチンの作用機序は、体の免疫機構に作用してその病気に対する抗体を作り出すことにあります。免疫細胞は、一度覚えたこと(ウィルスが入ってきたら直ちに攻撃する)はほとんど忘れないという優れた能力を持っています。スクエアダンスで例えれば、千代田で厳しくコーラーさんに指導して頂いたメンバーさんが、他のクラブに行ったときに、教わったことを素早く思い出し、絶対に間違わないということになるでしょうか。でも私たちは免疫細胞は持っていますが、不完全な人間ですのでなかなかそうも行きません。でもそこがスクエアダンスのおもしろいところカモしれませんね。


74.成人病といわれるもの
 千代田の会員の皆様の多くは、いわゆる中高年で、成人病の予備軍といえる方が多いと思います。中には、かかりつけの医師からすでに診断を受けて、治療中の方もおられると思います。今回は皆様が元気でいつまでもスクエアダンスを楽しむことができるように、成人病についてお話しいたします。

 わが国の死因の第1位は、何といってもガンです。ガンについては、早期発見、早期治療につきます。以前にもお話ししましたが、定期検診(健康診断)を受けることが大切です。とくに会社員は、在職中は職場でほぼ毎年健診を受けますが、退職後は面倒になりがちです。わが国では高齢者の2人に1人は癌になるといわれています。癌の原因はまだよく判っていませんが、細胞を新しく作るときに、元になるDNA情報が歳をとるにつれてうまく伝達できないことがひとつの要因だとされています。コピー機で複写を撮るとき、何回のコピーをすると字がかすれてきますが、それと同じことです。面倒がらずに検査を受けることが大切です。

 死因の第2位、第3位は、脳血管障害(脳梗塞、脳出血)および心血管障害(心筋梗塞、動脈瘤破裂)です。これらも、いわゆる生活習慣病といわれるものを予防していれば、ある程度防ぐことが可能です。高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病は、それを指摘された時点では痛くもかゆくもありません。そのため、健康診断などで指摘を受けても、ついつい何もしないで放置してしまう人が多いようですが、専門の医師にかからないでそのままにしておくと、動脈硬化→血栓症→脳梗塞、心筋梗塞というように発展してしまいます。一般的に、50歳を過ぎる頃(いわゆる更年期といわれる時期)になりますと、多くの人は高血圧、高脂血症の傾向が出てきます。食事をとると血糖が上がりますが、それをコントロールするのは膵臓から分泌されるインスリンというホルモンです。中高年になって暴飲暴食を重ねると、若い頃のようにインスリンが分泌できませんので、血糖のコントロールが悪くなります。これが糖尿病の元となります。これらの生活習慣病は、時間をかけて体中の血管を蝕み、脳血管、心血管障害を引き起こすことになります。ではこれらを予防するためにはどうすればよいのでしょうか。

 まず味の濃い食事を控えること(塩分制限)、脂っこいものは控えめに、お酒も程々に、そして適度な運動を継続して行うことです。それでもダメな場合は、迷うことなく医師の診察を受けましょう。

 スクエアダンスは3時間の例会で8000歩以上歩きます(間違えて動くとそれ以上?)。しかもコールを聞いて動くという他に類のないダンスで、知的刺激、反射神経、敏捷性、リズム感など五感のすべてが総合的に鍛えられます。基本の運動は歩くだけですので、高齢者でも安心です。例会では、いろいろな会員とおしゃべりしますから、中高年の孤独に悩むこともありません。もうお判りだと思いますが、スクエアダンスは成人病の予防、ボケ防止、精神衛生などすべての面で長生きの基となります。いろんなご縁で千代田スクエアダンスクラブの会員となられた皆様、できる限りスクエアダンスを続けて健康で長生きするようにいたしましょう。

75.プロとアマ
 あらゆる領域で言えることですが、プロの技術は素晴らしいと思います。家で食べる手巻き寿司もおいしいですが、老舗のお寿司屋さんにはかないません。プロゴルファー、プロ野球選手なども然りで、ちょっとやそっと練習してもとても追いつくことはできません。私たちの生活は、このような多くのプロ(職人と言った方がいいかもしれません)に支えられています。朝起きてごはんを食べる(食材はそれぞれのプロが用意してくれたものです)、食事の準備(主婦も立派なプロです。奥様、ありがとうございます)、仕事に出かける(鉄道やバスの運行もプロのなせる技です)、仕事に利用する様々な道具、電話やインターネット、無事に毎日が過ごすことができるように支えてくれる皆さん(警察官、消防隊、自衛隊などの皆さん)、等々、数え上げればキリのないほど多くのプロのお世話になっています。私たち一般人も、その方面ではプロの人が多くいます。会社員は電車に乗っているときは鉄道員というプロのお世話になっていますが、自分の仕事という面から見れば、その方面のプロです。このように社会学的にみれば、多くの人々は皆支え合いながら生活していることがよく判ります。ひと言でいえば、アマはプロの用意したスキルを享受するもの、プロはアマをそのスキルによって楽しませるものといえるかもしれません。

 ではプロとアマとはどこが違うのでしょうか。例えばピアノ演奏で例えてみましょう。プロの演奏:うまく演奏することは当たり前で、作品の表現を如何に自分流に行うか、聴衆に感動を与えるかがスキルの中心となります。もちろん、アマとは比較にならないくらい練習を積み重ねます。アマの演奏:何とかうまく弾くことが中心となります。技術的にも未熟なため、芸術の表現という次元とは程遠い演奏となります。

 千代田の会員の皆様は、皆さんその領域のプロばかりだと思います。リタイアされている人も、以前身につけられたスキルを活かして、会のためにいろいろと貢献されていますし、アニバの時には女性陣が大活躍され、おいしいスナックを盛り沢山作って頂けます。ではダンスの実際ではどうでしょうか。

 千代田の誇るプロ(といって差し支えないと思います)のコーラーさんたちは、私たち会員のために、寝る間も惜しんで(多分そうだと思っています)、楽しい(難しい?) コールを作成してくれています。ダンサーもこれに応えるように、アマ意識ではなくプロ意識で例会に臨んではと思います(少しオーバー)。テキストを読み、ビデオを見て、さあ、どんなひねったコールでもかかってらっしゃい、というくらいの気迫で出席したいところですが、なかなかそうはいきません。でも少しでもすいすいと踊れれば、自分も嬉しいし、コーラーさんたちも教え甲斐があるというものでしょう。千代田の会員は、他のクラブと違ってよく踊れるといわれれば、自分自身も嬉しくなりますし、会員としても誇りに感じられると思います。少しでもプロのスクエアダンサーに近づけるよう頑張りましょう。努力することは、頭や身体の健康にとてもいいことだと思います。

76.心の健康
 人間には感情があります。人間だけでなく、動物も感情はあるようです。褒めてあげれば喜びますし、叱ると何となくしゅんとしています。健康管理で一番大切なことは精神的な安静を保つことです。ピリピリした生活環境、人間関係で疲れる職場など、とかくこの世は精神的なストレスが増加しがちです。日本人の死因の第1位は癌、ついで心疾患、脳血管性疾患(この2つは、いわゆる脳出血、脳溢血や心筋梗塞などです)、肺炎、不慮の事故、老衰と続いて、何とその次が自殺となっています。このうち、上位3つは健康診断での早期発見、第4位の肺炎は、予防注射(以前にこのコーナーで述べたと思いますが、老人性肺炎の予防ワクチンは、高齢者にお勧めです)で防げる病気です。不慮の事故は、自分がいくら注意していても巻き込まれることがありますし、老衰もまあ天命だと思うしかありませんが、第7位の自殺は、いろんな事情があるのだと思いますが、カウンセリングなどで減らせる死因だと思います。

 自殺の背景はいろいろありますが、統計的には50歳代の男性に多く、悩みの原因としては、健康上の問題、経済的な理由などが挙げられており、その背景にはうつ病などの精神疾患が潜んでいるとされています。

 自殺は心の弱い人にだけ起こると考えるのは間違いです。むしろ、真面目な人や熱心な人、これまで強く生きてきた人に起こることが、決してまれではない現象なのです。われわれ普通の人間でも、落ち込んだりしたときに「死にたい」と思うことはまれにあります。ほとんどの場合は、家族や友人などに相談して自分自身で解決できてしまいますが、これらの人たちは、今まで強く生きてきた「体験」が徒(あだ)となって、自分ですべてを抱え込みすぎて判断を誤るといわれています。

 スクエアダンスは自殺予防にも有効です。まずダンスをしているときは、それまで悩んでいたことを忘れてしまいます(集中しなければスクエアダンスはできません)。それから、何といっても仲閒の励ましがあります。ダンス中ですから、深刻な悩みを聞いてもらうのではありませんが、ダンスを通していろいろなアドバイスや、ちょっとした冗談を聞くことで、当事者は自然と励まされていることになります。それに千代田は何といっても300人を越える人の輪があります。精神的な悩みを聞いてくれる、医療のプロや、悩みなどどこかに吹き飛ばしてくれる、お笑いのプロもおられます。ダンス会場でワイワイお話をし、アフターダンスで盛り上がれば、軽いうつ状態はどこかに行ってしまうのではないでしょうか。

77.イベント開催のプラス効果
 2020年に東京にオリンピックを誘致しようとしていることは、皆さんよくご存知だと思います。前回の東京オリンピックが1964年でしたから、この時にオリンピックを見た(というか、覚えている)人はおおよそ55歳以上の方々でしょうか。あいさんもこの時は中学2年生で、神戸に住んでおりましたから、白黒テレビで観戦しました。開会式の日は土曜日でしたが、みんなでオリンピックを見るようにと学校はお休みとなりました。テレビを通じてですが、体操ニッポン、女子バレーボールなど手に汗を握って応援した記憶があります。

 今の若い人たちは、生で夏のオリンピックを見たという方は少ないのでは、と思いますので、2020年のオリンピックは是非とも東京で開催して欲しいと考えています。先日、オリンピックコンサートという催しがあり、参加してきました。現役のアスリートさんたちも舞台に登場して会を盛り上げていましたが、何といっても大感激したのは、昔のオリンピックの映像が、東京オリンピックマーチの演奏と共に映し出され、女子バレーの優勝シーンやアベベ、チャスラフスカなどの懐かしいシーンを見る度に目頭を熱くしておりました。このようなイベントに参加すると、やはり是非とも東京にオリンピックを誘致したいと考えるようになります。イベントの開催にはお金もかかりますし、警備などを考えれば大変な手間もかかると思いますが、これで日本全体が元気になる、将来のある若い人たちに感動を与え、やる気と誇りを持たせることができるということを考えれば、大いに意義があると思います。

 千代田SDCでは、毎年10月にアニバという大イベントがあります。ゲストのおもてなし、会場やスナックの準備など、役員や会員の皆様の手間は大変ですが、イベントを盛り上げ、無事に開催すると、何とも言えない満足感がありますね。みんなで力を合わせて物事を成し遂げるということは、医学的に見てもとても健康に良いと思われます。

 生物は、自分の社会的な役割を終えると生命も終わるという特性があります。たとえば野生動物などは、エサをとる、こどもを作るという能力がなくなれば、その個体は死に向かうこととなります(誰もエサを分けてくれませんし、生殖能力が失われれば、次のボスがその座を奪います)。人間の場合は医学も進歩していますし、野生動物のような訳にもいきませんので、定年を迎えてから一般的には20年以上生き続けることとなりますが、その間、生きていることの喜びを見いだせないとつまらない余生を送ることになりかねません。スクエアダンスを習い、習熟することはひとつの生きがいとなりますが、それ以上に大切なことは他の人との繋がりが出来ていくことです。その集大成がアニバであり、合宿ということになるでしょう。縁あって世界一のスクエアダンスクラブに入会しているのですから、皆さんイベントには積極的に参加して人と人との触れ合いを楽しもうではありませんか。
78.「間(ま)」は大切
 人間にとって、いわゆる「間」はとても大切です。日常生活でも、いつも緊張を強いられることはストレスの元となります。適当に「間」を開けて、気分転換をはからないと、ストレスがたまって病気になってしまいます。

 「間」を取るということは、すべてのことに当てはまります。たとえば落語。素人が落語の本を読んで、一流の落語家が話すようにマネをしたとしましょう。落語家が話した場合は、聴衆の目の前に「八ッあん」や「熊さん」が現れ、活き活きとした仕草が伝わってきますが、素人が朗読した場合は、お話の内容は確かに伝わりますが、登場人物が現れるということはありません。どこで差が付くかというと、いわゆる「間」です。プロは「間」の取り方がとても上手で、それも単に間(あいだ)を開けるということではなく、その何とも言えない「間」を挟むことにより、お話しの中から登場人物が現れるという演出がなされます。千代田には話芸のプロもおられます。ちょっとした飲み会などで芸を披露して頂き、いつも楽しませていただいておりますが、その方のセリフをいくら真似ても、プロの雰囲気は出せるものではありません。セリフとセリフの「間」の取り方は、とても素人がまねできるものではありません。

 普通の仕事でも、「間」は大切です。たとえば料理。テレビなどでプロの料理人の仕事を見ていますと、魚を捌(さば)いたりしているとき、常に一定のリズム(これがいわゆる「間」です)で仕事をされています。包丁を入れる、切り身を寄せる、骨を外す等、プロの仕事は見ているだけで気持ちのよい動きをされています。

 仕事をしているとき、通常は無意識なのですが、皆さんもご自分の「間」を上手にとっておられると思います。集中しなければいけないところは目一杯集中し、それが終わると少し神経を休める(決して手を抜いているわけではありません)、そして次の山ではまた集中するということを繰り返していることがおわかりになると思います。この気持ちの切り替えが、日常生活のストレスを取ってくれているのです。

 スクエアダンスは15分くらいがワンチップとなります。以前にも書きましたが、15分という時間は人間が程よく集中を持続できる最大限の時間です。これ以下だともの足らなくなりますし、これ以上続けば苦痛となります。例え簡単な講習でも、あまりに長い時間はビギナーさんのみならずベテランダンサーをも集中を切らせてしまい、どっと疲れることとなってしまいます。15分のワンチップ中にも、「間」はあります。普通は、最初は易しい動き、途中(ウォーミングアップが終わった頃)からレフトハンドなどの難しい動き(コーラーさんの腕の見せ所です)、最後はまた易しい動き(クールダウン)といったリズム構成が中心です。コールとコールの間にも「間」はちりばめられています。アニバのジョニーさんは、「ボーイズトレード」、「ガールズトレード」、「センターズトレード」など、すべてトレードで、セットが大混乱となるコールをかけておられましたが(でもとてもおもしろかったと思います)、これも「間」をうまく取っているから踊れる人は対応できるのであって、「間」がきちんと取れていなければ、単に混乱するだけ(ちっともおもしろくない)ということになります。「間」の取り方も教えてくれるスクエアダンスは、誠に奥深いものだと実感しています。
79.眠りの科学
 人間は1日8時間くらいの睡眠が理想的とされています。もちろんこれ以下の人も数多くおられると思いますが、医学的には1日最低5時間程度は睡眠が必要だといわれています。ナポレオンは、ほとんど眠らなかったという伝説がありますが、夜に眠らなかっただけで、昼間に馬の上でうたた寝していたのではと考えられているようです。私たち一般人も、仕事が忙しくて徹夜することがありますが、翌日は眠くて仕事にならないといった経験はどなたもお持ちのことと思います。では睡眠はどうして必要なのでしょうか。

 ひとことで、睡眠のしくみを表現すると、「生体リズム」ということになります。 生体リズムは、脳の視床下部にある「生体時計」が基になっています。この時計により刻まれるリズムが生体リズムとなって、身体全体の調子を整えています。したがって、自然と夜になると眠くなって、朝になると目覚めるという規則正しい習慣が生まれます。外国に行くと、「時差ボケ」がおこりますが、これは身体のリズムと環境の時間がずれているために起こります。大抵は1週間以内に直りますが、多くはその頃に帰国しますので、日本でも「時差ボケ」が起こります。

 睡眠なしに、われわれは生きていくことはできません。睡眠をとることにより、体と脳の両方を休息させ、心身の活動エネルギーを保存します。脳は身体の中で一番の大食漢で、エネルギー、血流の大部分は優先的に脳に回されます。ということは、何もしていない状態でも脳に血液が循環しますので、脳の温度が上昇します。パソコンを長時間使用していると中央演算素子(CPU)が加熱しますが、脳も働きずくめだと同じような状態に陥ります。睡眠中も脳の活動が完全に停止している訳ではありませんが、パソコンでいう、いわゆるスリープ状態になりますので、血流が減少し、脳の加熱が押さえられます。脳だけではなく、身体も横になって休むことができますから、心身のリセットには睡眠は不可欠ということになります。

 睡眠は脳と体のリセットですので、睡眠後は心身ともにリフレッシュされ、頭の回転も良好となります。暗記物は朝起きてからするのが有効とされていますが、大脳生理学的にも正しい方法だと思います。

 睡眠障害に陥ると、このような規則正しいリズムを刻めなくなり、心身に悪影響が出ます。最近では、生活習慣病やうつ病まで睡眠が深く関わっているということが判ってきています。睡眠の質を上げることは、健康にとっても重要なこととなります。

 わたしたちはスクエアダンスを習っていますが、これも睡眠の質を上げる大切な習慣です。週に1回の例会、例会では程よい運動とアタマの体操、良い疲れ具合となり、家に帰ってビールでも飲んで早く寝て、翌日早く起き、昨日のレッスンのおさらいをする、この規則正しい一連の習慣が生活の質を上げ、睡眠の質も向上させているのです。でも考えすぎは禁物です(考えすぎると眠れなくなる?)。うまく踊れなくても、気にしないで翌日に持ち越さないといった良い意味での開き直りも大切ですね。

80.アナログ、デジタル
 よく聞く言葉ですが、インターネットの百科事典である、ウィキペディアによると、アナログとは、連続した量(例えば時間)を他の連続した量(例えば角度)で表示すること。デジタルが連続量をとびとびな値(離散的な数値)として表現(標本化・量子化)することと対比される。時計や温度計などがその例である。デジタルとは、離散量(とびとびの値しかない量)のこと。連続量を表すアナログと反対の概念である。工業的には、状態を示す量を量子化・離散化して処理(取得、蓄積、加工、伝送など)を行う方式のことである。と記載されています。これではよくわかりませんので、簡単な解説を。

 アナログは、ものの変化量を目で見て判りやすく表示したものとお考え下さい。たとえば、時計、温度計の他には、クルマのスピードメーター(昔のクルマですよ)を想像すれば分かりやすいと思います。デジタルは、その変化を数字で表したものです。最近の時計、温度計やハイブリッド車のスピードメーターなどはすべて数字で表されています。言葉の特徴として、これらの用語は、たとえば、オールド世代をアナログ人間、若者をデジタル世代というようにいろいろなところで応用的に使われています。

 一見すると、たとえばレコードプレイヤーはアナログ、パソコンの音源であるMP3はデジタルのように感じますが、最近のレコードプレイヤーは、レコードの溝から得た針の振動を、デジタル処理してアンプで増幅し、スピーカーを鳴らしていますので、完全なアナログとは言えません。強いていえば、昔の蓄音機、ゼンマイ仕掛けの昔の時計などは完全なアナログ商品と言えるでしょう。でも今の世の中にあるものを完全にアナログ、デジタルと分けることは不可能のように思われます。

 一方、人間を初めとする生物はどうでしょうか。ロボットは完全なデジタル製品ですが、私たち人間は完全なアナログ的生物と考えてよいでしょう。ものを忘れたり、間違えたりするのが人の常ですが、逆にそれが人間らしいと言えるでしょう。動物も同じで、ペットロボットなどでは、いつも同じことしかできませんので、最初はかわいくても飽きてしまいそうです。本物のペットは人間と同じで時々ドジを踏みます(ソファで居眠りしていて、転げ落ちてしまう等々。でも落っこちたあとは、何となく恥ずかしそうに、知らんふりをしていますが・・)。そこが生き物の特徴で、かわいらしいところですね。

 スクエアダンス(だけでなく、すべてのダンス)は、完全にアナログです。人間ですから、間違いもよく起こります。でもそれが楽しいところです。間違えなければそれで良いというのなら、パソコンで作ったコールをコンピューターがしゃべり、それに合わせて8台のロボットが踊っている姿を想像して下さい。何とも味気ない風景ではないでしょうか。

 コーラーさんが一生懸命に考え、作成したコールで私たちが踊る、そこで難しいところを間違えないように必死にアタマを働かせる、うまくいったときの達成感を心の底から味わう、このアナログ的な素晴らしい連携がアタマと身体、それに心を鍛えてくれていると思っています。

81.ダンスと音楽
 軽快な音楽が流れると、自然と身体が動きます。スクエアセットを組んだあとに、コールが始まる前の音楽を聴いていると、皆さん気持ちよさそうに身体でリズムを取っておられます。では、人類はいつ頃から音楽とダンスを融合しはじめたのでしょうか。

 人類が活躍しだした年代は、不確かですが数万年前くらいといわれています。スペインのアルタミラ洞窟の壁画が世界最古といわれていますが、動物などと一緒に狩りをする人間の姿が描かれています。あまり道具のない時代に狩りをする場合、大人数で声を掛け合って行った方が効率が良いと思われますので、その頃にはリーダーの合図で皆が動くといった、一種の社会構造が出来上がっていたと思われます。合図を出すのは声、口笛などですが、小鳥のさえずりを真似るというところから口笛、指笛などの技術が発展したのでしょう。人数が増えてきますと、リーダーの合図で声を掛け合う、独特の節回しでその合図を復唱するというところから、いわゆる「だみ声」から詠歌という形に変化していったと思われます。社会構造が進歩してくると、豊作の時の神様へのお祈り、人が死んだときの嘆きなど、お祈りや詠歌がさらに発展し、口笛などから葦笛などの楽器の発展に繋がっていったのでしょう。古代メソポタミア遺跡では、現在の楽器の原型といわれるようなものが数多く発見されています。たとえば弦楽器は西洋ではギター、バイオリンとなり、東洋では琵琶や胡弓と進化したと考えられています。

 音楽の進化とともに、踊りも進化しました。豊作の祈り、死者への弔いなど、音楽とともに踊りも切り離せないものとなったのでしょう。日本では神楽(かぐら)や祝詞(のりと)にその片鱗を垣間見ることができます。音楽の節回しは、口伝えから独特の記号を付記することにより伝えられてきたようです。古代ギリシャやエジプトの遺跡にも、音の高低を表していると考えられる壁画があるそうです。西洋では13世紀頃から今の楽譜の元となったものが見つかっていますが、それ以後、急速に作曲、演奏などの音楽技術が発展しました。

 踊りはどの国も音楽とともに存在してきました。複数の人数で踊る場合は合図が必要となりますが、それが時代とともに音楽になっていったのでしょう。太鼓や笛の合図だけで動くよりは、軽快な音楽に合わせてステップを踏んだ方がどれだけ楽しいでしょうか。わが国では日本舞踊、西洋ではワルツ、カドリールなどのダンス、バレーに発展してきました。

 スクエアダンスはその中でも特殊で、基本的なコールを覚えること、しかもそれだけではなく、コーラーさんがどんなコールをかけるか判らないのに、瞬間的にそのコール通りに踊ることが要求されます。アメリカで発展したスクエアダンスは、まさに20世紀を代表するモダンダンスではないでしょうか。もうひとつ、スクエアダンスの特徴は、バレーなどと違って人に見せるダンスではなく、ダンサーそのものが楽しむための踊りであるということでしょう。しかも複雑なステップはありませんし、競技性もないので、コールさえ覚えれば安心して楽しむことができます。コールの数はメインストリームで約70個ですが、バリエイションがありますし(レフトハンドの動きなど)、コーラーさんによってはとんでもないところから複雑なコールがかかりますので(オーシャンウェーブからのスクエアスルーなど)、アタマも身体もフル回転します。医学的にみて、レクリエイションとしてはこれ以上のものは無いと思っています。

82. 新陳代謝
 体の組織は、新陳代謝を繰り返しています。判りやすいところでは、髪の毛、爪などでしょうか。少しずつ根元から生えていきますね。髪の毛は1日に0.3-0.4mm、爪は0.1mmくらい延びるといわれています。新陳代謝は、生命維持に不可欠なもので、これによって身体は常に新しく生まれ変わっています。「細胞の新陳代謝」の周期は部位によって異なっており、胃腸の細胞は約5日周期、心臓は約22日周期、肌の細胞は約28日周期、筋肉や肝臓などは約2ヶ月間の周期、骨の細胞は約3ヶ月周期といわれており、細胞の新陳代謝が正常であれば身体は約3ヶ月で新しく生まれ変わることになります。身体の垢(あか)も皮膚の上皮のなれの果てで、いくら毎日お風呂に入っても、一定の量の垢は毎日出てきます。垢がたまったくらいでは死ぬことはありませんが、日本人は清潔好きですので、毎日お風呂に入らないと気持ち悪いという方も多いと思います(我がクラブのAさんは、職業柄、何日もお風呂のないところで生活しなければならないとのことですが、小生はとても耐えられません)。

 神経細胞でも新陳代謝が行われています。末梢神経などでは再生が起こりますので、手のケガなどで一部しびれてしまったところも、リハビリである程度自然に治ります。中枢神経(大脳や小脳)では、分子レベルで見ると細胞の新陳代謝は行われていますが、記憶などは細胞のネットワークで構成されていますので、手術や事故などで大脳に同時に大きく損傷した場合を除くと、脳細胞同士の記憶の伝達もきちんと行われているようです。ただしこれは若い人の場合で、年齢を重ねるにつれて、残念ながら記憶は薄れていきます。

 新陳代謝で新しい細胞が出来上がるとき、その通りにうまくコピーできれば問題ないのですが、何回も繰り返していると、コピーがうまくいかないことがあります(コピー機で同じ文章を何回もコピーしていると、字がかすれてきますが、これと同じようなものだとお考え下さい)。これがいわゆるシミの元で、紫外線などの影響で起こりやすいとされています。程度がひどい場合は、癌の発生にも繋がってきます。

 千代田スクエアダンスクラブでは、毎年2-30人の新人がデビューされます。組織としてみれば、素晴らしい新陳代謝機能だと考えています。クラブ員としては、何年か在籍してクラブになれてきたら、ダンスだけでなく、クラブの運営などにも積極的に参加し、効率の良い新陳代謝となるよう努力したいところですね。



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